【悲しい灯 事件】-女子高生 朽屋 瑠子-
投稿者:kana (210)
K氏は丁寧に応えた。
「そうですか、ビフ・・・ロンスさん。私はこれから娘を迎えに行くところです。
またいつか、機会があればゆっくりお話しいたしましょう。さようなら・・・。」
そう言ってクルマに戻ろうとしたK氏に、ビフロンスは気になるヒトコトを投げかけた。
「おいたわしや・・・その娘、私なら生き返らせることができるのに・・・」
K氏は振りむき、その魔物を驚きを持って見つめた。手が震える。
「本当か!?・・・いや・・・人が生き返らないことくらい私だって知ってます。騙すつもりなら怒りますよ。私にはもう失うものはないんですからね」
すると悪魔はその四つの瞳からポロポロと涙を流した。
「あぁ、なんとお可哀そうに。大事なものを失った人はみんなそうだ。娘さんが死んだ事を、自分のせいだと思ってるんでしょ?・・・違いますよ、それ・・・」
「ち、違うとは・・・どういうことですか?」
「あなたは神にお祈りしたのではありませんか? 娘を助けてください、娘を生き返らせてくださいと・・・そうじゃありませんか?」
K氏はだまって聞いた。
ビフロンスは大きく身振り手振りでハデに動きながら声高に言い放った。
「だが、神はなにひとつ願いなど聞いてくれない!! 全能の神!? 笑わせる!!なら娘の一人でも生き返らせてみせよ!!・・・でも、でもそうはならなかった。神なんて無力です。 いや、神こそが真の人殺し!!やつこそが人の運命をあやつる張本人! 娘に死の運命を与えたのも神、そのものではないか!!」
「そ、そうです・・・その通りです。神は私たちに何もしてくれなかった。何も・・・」
K氏がぽつりとこぼす。
ビフロンスは一瞬ニヤリとしたが、すぐに神妙な顔に戻った。
「お気づきだと思いますが、私は悪魔です。この醜い姿を隠さずお見せしたのは、あなたに何一つ嘘を言わないという証です。そもそも、悪魔が悪いなんてことは神が勝手につけたレッテルにすぎません。むしろ死の世界こそ我々の世界。死んだ娘さんを救えるのは私たち悪魔だけなのですよ。・・・そして不肖、このビフロンスは悪魔界きってのネクロマンサーでもあります」
「ネ、ネクロマンサーとは・・・なんですか?」
「ふふ。あなたと娘さんを救う秘術、蘇えりの術を操る者、それがネクロマンサーです。
実際に私はアメリカでも、ヨーロッパでも、アフリカでも、多くの人を生き返らせてきました。みなさん死ぬほど喜んでおられましたよ」
「・・・でも・・・本当にそんなことが・・・」
「にわかには信じられない。それもそうでしょう。ネクロマンシーは非常に難しい魔術です。それを執行するには、それなりの覚悟がなければなりません」
「覚悟とは・・・」
「あなた、先ほど怒ってこう言いましたよね。私にはもう失うものはないと。
・・・美しい・・・とても美しい・・・まるで尖った山の頂点に立っているかのように凛としておられる。・・・その心があれば、どんな試練も乗り越えられるはずです」
「娘が生き返るのならば、私は自分の命も惜しくない!! 代わりに死んだっていいんだ!!」
K氏は叫ぶように心の内を吐きだした。
kamaです。朽屋瑠子第10作目は、VS 悪魔ビブロンス戦です。
今回はボクの作品の中でもとくに悲しく救われない話となっていた「悲しい灯(ともしび)」の解決編ともなっています。そちらも併せて読まれると、世界観が広がると思います。
お盆休みの暇な時間のお供に、ぜひどうぞ。
kamaです。誤字脱字などいくつか修正しております。もし見つけた方はお知らせください。よろしくお願いします。
いい話だ。
ただ、ちょっと長いで( ´∀`)。
いつも楽しく読ませて頂いております
クッチャルコ新作、待ってました!
心温まる話でハッピーエンド、いいストーリーでとても良かったです
次回作も期待してます
↑kamaです。コメントありがとうございます。ちっょと長いですが、これでもがんばって半分の長さにしました。半分って、すごい削除量でしょw
怖くは無かったけれど面白かったです。
怖いというか、詐欺師ってこうやってだましていくのかという別の怖さがあった。
陽菜ちゃんと同い年の中学生くらいの子たちに読んでほしい気がする
↑kamaです。コメントありがとうございます。
楽しんでいただけて何よりです。朽屋瑠子シリーズはボクが一番楽しんでいるので、同じ目線で見てくれている読者様にはとくに感謝いたします。残念ながら今回出番がかなり短いですけど、これも半分に削ったためですね。削る前のオリジナルでは朽屋が赤ちゃん言葉を使うシーンと、仲間にパンツ見られるシーンもありました。(どんどん怪談から遠くなるので削除)
・・・またいつか別の機会に。
一同に会するじゃなくて一堂だと思います
↑kamaです。ありがとうございます。修正させていただきました。本当に助かります。またなにかありましたらご指示よろしくお願いします。