が、朽屋はその隙を見逃さなかった。
ガラ空きになった青年のみぞおちに、思い切り蹴りを入れた。
部屋の隅まで吹っ飛ぶ青年、悶絶して床の上をのたうち回る。
人間の急所を思い切り蹴られたのだ。しばらく呼吸もできないはずだ。
「ねぇ、キミ、ベルトとか持ってないかな?」
勝手にクローゼットを開けて中を荒らす朽屋。
「あっ、あったあった。・・・ていうか、なんでこんなに女の子の服があるの?変態さん?」
青年は油汗をかきながら床で沈黙しており、なにも返答できない。
朽屋はクローゼットにあったベルトを使って簡易の手錠を作り、青年を床に寝かせたまま後ろ手にして、両手首を固定した。2本目のベルトで足首を縛り上げ、3本目のベルトで腿のあたりも縛りあげた。
「どう?縛られる気分は。よかったわね、キミ。ここが戦場だったらとっくに首を掻っ切られて死んでるとこよ。・・・悪いけどしばらくそのままでいてね。今、警察呼ぶから」
しばられた青年の横に母親の霊とお婆さんの霊がたたずんでいるのが朽屋には見えている。
「ママさん、お婆ちゃん、連れていきたいのは判るけど、我慢してね。この子は人間界で罪を償わせるわ・・・と言っても二人も殺してるとなるとネ・・・後でお二人の供養をしますから、ここは私に免じて勘弁してネ」
そう言うと朽屋はスマホで警察に連絡を取りながら部屋を出た。
状況を説明し、5分ほどで到着するとのことだった。
朽屋はアジサイの咲き誇る庭に出て、例の真っ赤なアジサイの傍らに来た。
「おそらくこの下に、二人が眠っているのね。土が柔らかいわ」
朽屋は一瞬ここを掘り返して確かめようと思ったが、警察を呼んだ以上、それらの捜査は警察に任せるのが筋だと思い、やめた。
やがて遠くから警察のサイレンが近づいてくる。
その頃、自室で縛られていた青年はやっと息を吹き返し、縛られたまま、イモムシのように這って脱出を試みようとしていた。サイレンの音が青年の部屋まで聞こえ始めた。
ぞくぞくと集まるパトカー。オーバー過ぎるほどの車両が集まり、周辺は大騒ぎとなった。
ここは高級住宅地でもある。万が一逃げられて人質でも取られれば警察の失態となるのは目に見えている。だから警察も本気で動いたのだろう。あっという間に周囲は包囲され、交通も遮断された。
ぞろぞろと警官が朽屋の元に集まる。
「あなたが通報した方ですか」
「ハイ。犯人は二階の奥の部屋に拘束しています。あとはお任せします」
「事情聴取がありますので、あちらのパトカーで待機していただけますか?」
朽屋は善良な一般市民を演じて、警察の言うままにパトカーで待機した。
パトカーの中からアジサイのお屋敷を見てみると、二階の窓から二人の霊が下を見おろしてニヤニヤしている。
「あぁ・・・悪い予感・・・。やっぱ許せないのかしら」
朽屋はもう屋敷を見るのをやめた。
警官隊がドタドタと屋敷の階段を登る。二階にあるすべての部屋の前、階段、エレベーターの前に警官が待機し、万が一の逃走も許さない体制を敷いて、いよいよ一番奥の青年の部屋に入る。

























kamaです。自分で書いてて一番楽しい完全自己満足の「朽屋瑠子シリーズ」もおかげさまで8話目となりました。今回は、いつもの妖怪・悪魔退治とは打って変わって対人間です。
ボクの作品を読んでくれている方ならお分かりと思いますが、以前投稿させていただいた
「アジサイガサイタヨ」の解決編となります。あちらの作品をまず読まれてから、こちらお話を読まれると、世界観が広がってより楽しめるかもしれません。
じっくり楽しんでいってください。
解決編で犯人が判りスッキリしました。犯人はロリコン変態気質かな?身震いがするような恐さがありますね。
やはり悪い事をすれば天罰がくだるんです。
↑kamaです。コメントありがとうございます。
「アジサイガサイタヨ」のお話は殺人犯が犯行をやり遂げて、そのまま終わったことで非常な不快感を持って終わりましたが、クッチャルコがそれを回収できていれば幸いです。朽屋も最後は目をつぶってましたしね。裁かれるべくして裁かれた、という感じでしょうか。次回作もお楽しみに。
最後のほうに「そば屋に出る幽霊」の解決篇が今から期待しています。
↑kamaです。それもおもしろそうですね。
札幌のホテルで首を切断された男性遺体。
朽屋瑠子が公開されると、似たようなキーワードの事件が発生する。
とくのしんです。コメント返しです(笑)
シリーズ化凄いですよね。それに投稿数も凄いと感心しちゃいます。
自分は単発物しか書いていませんが、話の仕入と仕事の合間しか書かないので、頑張っても投稿数は1~2程度が限界です。
kamaさんのこのシリーズは個人的に凄く楽しめているので、これからも怖くて面白い話の投稿楽しみにしています。
↑kamaです。ひょえ~~~とくのしん様、ありがとうございます。
朽屋瑠子シリーズは自分で書いてて一番楽しい作品です。なんたって過去の書いたお話のプロットはそのままに、別視点で解決編を書けますからね。キャラたちが勝手に動いて事件を解決していくのでボクも楽しみにしております。
お褒めを頂いた投稿数も、そろそろネタ切れですから、これから頻度は下がると思いますが、今後ともよろしくお願いします。とくのしん様作品はかならず全部読ませていただきます~~ありがとうございました~!
アジサイ含め、彼が育てていると言った植物はすべて毒草ですね。
面白かったです!
胸の第3ボタンを外すと大爆発・・・ビジンダーですね。