あっという間に結束バンドから逃れて自由になった朽屋を一瞬呆然と見つめる青年であったが、机の引き出しからナイフを取り出して朽屋へ向けた。
「せっかくキレイに死なせてあげようと思ったのに・・・もう・・・血の掃除するのめんどくさいんだからね!!」
「呆れた。・・・あなた、サイコパス?」
「な、なんだと・・・なめたことを」
「それより、キミ、おもしろいもの見たくない?」
「・・・次はいったいなんだ?!」
「それ、ビデオ撮ってるんでしょ?・・・変態チックに・・・ちょっとビデオのモニター見てごらん。今ね、この部屋に、あなたのママとお隣のお婆さんが来てるのが見えるはずよ」
「な、なんだって??」
青年はナイフを朽屋に向けたまま、ビデオの液晶モニターを見てみた。
「うわっ!!」
そこには、自分の手で殺したはずの母親と、隣家のお婆さんの姿があった。
白目をむいた真っ白な顔に、どす黒く血が流れている。足元は土まみれで、体の半分が腐っているような、恐ろしい姿に見える。青年はビデオのモニターと何もない空間を交互に見て目を丸くしている。
「どう?見える?ワタシにはさっきからずっと見えてたんだけどね。私がいるとコンバーターの役目をして、ビデオとかに霊が映りやすくなるのよねぇ。子供時代は苦労したのよ」
「だ・・・誰が入っていいと言ったぁぁぁぁ!!!!」
青年が突然ブチ切れて叫び出した。
「部屋に入る前はノックをしろと、あれほど言っただろう!!勝手に入るなって、言ったよなぁ!!・・・死んでからもー! まだボクの言うことが聞けないのか!!」
そう怒鳴ってビデオカメラを取り、おもむろに振りかぶって霊のいるあたりに投げつけた。
「おっと・・・」投げられたビデオカメラを枕を使ってキャッチする朽屋。
「これ、証拠品だからいただくわね」
「・・・もういい、オマエ、死ね!」
青年がナイフで猛然と襲って来る。朽屋はなんでもいいから手近にあるものを掴んで、
ナイフをはじいた。一瞬ひるむ青年。
朽屋も自分が掴んで武器にしたものを見て一瞬キョトンとした。木でできたハンガーだ。
壁にもうひとつあったので、両手にハンガーを持ってみた。
(・・・ヤバイ・・・子供時代に、こんなような刑事さんが活躍する映画を見たような気がする・・・それ見て笑ってたのに、まさか実戦で使うハメになるとは・・・)
とりあえずハンガーをくるくる回してみる。青年は警戒している。案外効いているようだ。
再びめちゃくちゃに襲ってくる青年。
彼のナイフの動きを凝視する朽屋には、それがスローモーションのように映る。
朽屋は手にしたハンガーでそれを下から思い切り弾き飛ばした。
ナイフは勢いよく飛び、天井に突き刺さった。
焦った青年はそれを取ろうと手を伸ばし、思い切りジャンプした。
























kamaです。自分で書いてて一番楽しい完全自己満足の「朽屋瑠子シリーズ」もおかげさまで8話目となりました。今回は、いつもの妖怪・悪魔退治とは打って変わって対人間です。
ボクの作品を読んでくれている方ならお分かりと思いますが、以前投稿させていただいた
「アジサイガサイタヨ」の解決編となります。あちらの作品をまず読まれてから、こちらお話を読まれると、世界観が広がってより楽しめるかもしれません。
じっくり楽しんでいってください。
解決編で犯人が判りスッキリしました。犯人はロリコン変態気質かな?身震いがするような恐さがありますね。
やはり悪い事をすれば天罰がくだるんです。
↑kamaです。コメントありがとうございます。
「アジサイガサイタヨ」のお話は殺人犯が犯行をやり遂げて、そのまま終わったことで非常な不快感を持って終わりましたが、クッチャルコがそれを回収できていれば幸いです。朽屋も最後は目をつぶってましたしね。裁かれるべくして裁かれた、という感じでしょうか。次回作もお楽しみに。
最後のほうに「そば屋に出る幽霊」の解決篇が今から期待しています。
↑kamaです。それもおもしろそうですね。
札幌のホテルで首を切断された男性遺体。
朽屋瑠子が公開されると、似たようなキーワードの事件が発生する。
とくのしんです。コメント返しです(笑)
シリーズ化凄いですよね。それに投稿数も凄いと感心しちゃいます。
自分は単発物しか書いていませんが、話の仕入と仕事の合間しか書かないので、頑張っても投稿数は1~2程度が限界です。
kamaさんのこのシリーズは個人的に凄く楽しめているので、これからも怖くて面白い話の投稿楽しみにしています。
↑kamaです。ひょえ~~~とくのしん様、ありがとうございます。
朽屋瑠子シリーズは自分で書いてて一番楽しい作品です。なんたって過去の書いたお話のプロットはそのままに、別視点で解決編を書けますからね。キャラたちが勝手に動いて事件を解決していくのでボクも楽しみにしております。
お褒めを頂いた投稿数も、そろそろネタ切れですから、これから頻度は下がると思いますが、今後ともよろしくお願いします。とくのしん様作品はかならず全部読ませていただきます~~ありがとうございました~!
アジサイ含め、彼が育てていると言った植物はすべて毒草ですね。
面白かったです!
胸の第3ボタンを外すと大爆発・・・ビジンダーですね。