女子大生梨乃─悪夢のヒッチハイク旅行
投稿者:ねこじろう (147)
放牧地だろうか、遠くに4、5頭の牛の姿が見える。
草木が猛スピードで後方に動いていているから、車は結構なスピードで走っているようだ。
私は思いきってドアを開けた。
一気に外の雨風が入り込んでくる。
足がすくんだのだが、これから起こるであろう恐ろしいことを考えると私は一か八か思いきって飛び降りた。
同時に、
あの老婆の狂ったような笑い声が聞こえてきた。
「あ~ははははははは!」
体は濡れた芝生の上で何度か勢いよくバウンドし、その都度あちこちに強烈な痛みが走る。
それからゴロゴロと転がり最後は大きめの木にぶつかり、そのまま仰向けに倒れこんだ。
薄れ行く意識の中でジーンズの尻ポケットから携帯を引っ張りだすと、母に電話していた。
※※※※※※※※※※
目覚めたときは病室のベッドの上だった。
体のあちこちに包帯が巻かれている。
腕と脚がずきずきと痛む。
左を向くと心配げな母の顔が飛び込んできて「ああ、良かった、、、」というほっとした声が聞こえてきた。
携帯のGPS 機能によって比較的早く私は発見され、すぐに地元の病院に運ばれたらしい。
体の数ヶ所を骨折してたそうだが、命には別状はなかったらしい。
それから一週間が経過した。
怪我は順調に回復している。
時々母から怪我をした理由を聞かれたがまだ言いたくない、と言って頑なに口をつぐんでいた。
実際あまり思い出したくなかったからだ。
そして入院して10日が経った、ある雨の朝のこと。
朝食後に看護師が「今朝早くあなたのお友達という男性の方がナースステーションを訪れてきて渡して欲しいと言ってこれを持って来られました」と、あるものを部屋に持ってきた。
それを見た途端私の背筋は凍りつき、心臓は急激に鼓動を速めだした。
それは一本のピンクの薔薇。
「また後日改めて伺います」ということですとだけ言うと看護師はさっさと出ていった。
全身の震えが止まらない。
生暖かい汗が額から頬をつたうのを感じる。
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