【USAのUMA事件】-研修生 朽屋瑠子-
投稿者:kana (210)
群衆の一人がつぶやいた。
「うわぉ、仔牛がバッファローを倒したぞ!」
「マーベリックだ(まだ焼き印を押されていない仔牛=異端者、型破り)」
「マーベリック!」
「マーベリック!」
あっという間に群衆の中から、朽屋瑠子を指してマーベリックコールが湧き上がった。
この日から、朽屋は米軍関係者からは「クッチャルコ」ではなく「マーベリック」と呼ばれるようになった。
1時間後、シャワーを浴びてクールダウンした二人は大佐と共にミーティングルームに集まっていた。朽屋が軍曹に話しかける。
「さっきはごめんね、本気出しちゃった」
「あぁ、こっちは油断していたぜ。ただのガキ相手にどう料理してやろうかってな。
・・・次は本気で行くぜ、マーベリック」
「No!No!さすがに軍曹に本気で来られたら、私、壊れちゃう」
「あぁ、わかってるさ。オレの負けだよ。戦場では油断が死を招くんだ。わかってたつもりだったんだが、改めて教えてもらったぜ」
軍曹が朽屋にデカイ手を差し出して握手を求めてきた。
軍曹のわだかまりは、すっかり消えているようだった。
「さて、作戦の概要だが・・・」スミス大佐が説明をする。
「ターゲットであるベヒーモスの出現状況に関しては資料にある通りだ。最初の被害は野ブタの駆除中に起きていることから、まずはこれを再現する。野ブタに関してはすでに数十頭確保しているので、作戦当日はこれをフィールドに離し、バーナード軍曹が指揮する分隊が2台のハンヴィーを使用して追い回す」
「ブタのケツを追い回すことになるとはね」とこぼす軍曹。
「尚、分隊火器はすべて空砲とするので、野ブタの射殺はできん」
「なんですって?大佐、じゃあベヒーモスが出てきたらどうするんですか?」
「逃げるんだ。適度な距離を取ってな」
「そんな、やらせてください!ベヒーモスにフルメタルジャケットをぶち込んでやります」
「ダメだ。ベヒーモスに通常火力が効かないことはすでに証明済みだ。それに作戦フィールドはありとあらゆる電子機器が監視する場となる。軍人ではない科学者たちも周辺で大勢待機することになる。流れ弾でも当たったら大変だ」
「本当に逃げるだけなんですか」
「端的に言うと、軍曹にはベヒーモスをおびき出す囮、エサとなってもらう」
天を仰ぐ軍曹。
「ベヒーモスは未知の敵だ。生物なのかすらわからない。逃げるだけでも命がけになるかもしれん。軍曹、キミの勇猛な分隊の力が必要だ」
軍曹は納得したように大佐を見つめた。
「イェッサー! 先ほどマーベリックから油断しないことを学びました。全力で作戦に当たります!」
大佐はその答えに満足したようにうなずいた。
kamaです。
朽屋瑠子シリーズも今作で7作目となりました。過去作品もお読みいただくと、より世界観が広がると思います。よろしくお願いします。
今回のお話は、朽屋瑠子シリーズの中でも最も長編となった【より子ちゃん事件】で瀕死の状態になった朽屋が復活する過程でアメリカに研修に行っていた時のお話になります。
朽屋シリーズは時系列がバラバラなのはご了承ください。
ロマンホラーって感じで、気軽に楽しんでいただければと思います。
また誤字などありましたらお気軽にお知らせください。
先生の久しぶりの力作を楽しみです。
↑kamaです。毎度読んでいただきありがとうございます。
朽屋瑠子シリーズは別に怪談としてぜんぜん怖くないし、なんなら中二病全開で、話も長くてYoutubeでも2回くらいしか朗読されたことありませんが、自分で書いてて一番楽しいです。
えぇ、これが自己満足の世界というやつです。
「沖縄のキャンプ座間」が気になってしまいました。沖縄なのか座間なのか。今後のストーリーに影響なければ流すのですが。
↑kamaです。設定のご指摘ありがとうございます。「沖縄」をはずさせていただきました。
実は最初に書いた原稿で、大佐が沖縄のキャンプシュワブにいた設定にしていたのですが、
ご存じの通りキャンプシュワブは米海兵隊の基地で、グリンベレーと海兵隊の協力関係があったという設定もできますが、やはり陸軍は陸軍ということで、途中で座間に変えたのですが、沖縄のまま進めてしまいました。ご指摘大変ありがたいです。またなにかおかしなところがあったら教えてください。
ラストの方でチョコバーを差し入れるマーベリックがかわいくてちょっと萌えました。
↑kamaです。コメントありがとうございます。萌えは大事ですね。
学業と訓練の二刀流の瑠子、カッコいい!
↑kamaです。コメントありがとうございます。でも、実質1年留年です。そこはテヘペロです。
ちょっと待て、16歳の太ももで三角締めって、ご褒美じゃねーか!
最近、射撃場という言葉をよく目にする。ひとつはこの作品。もうひとつは自衛隊のニュース。
出だしのセリフ、北斗の拳かと思った。