【short_95】お婆さんからのクレーム
投稿者:kana (210)
深夜、隣の古い一軒家に住むお婆さんが、突然ドアをノックしてきた。
何事かと思って出て見ると、どうやらそれはクレームのようだった。
「夜、寝ようとしても、あなたのウチの窓の光が寝室に入って来てまぶしくて眠れない」
・・・だから電気を消してくれと言うのだ。どうやら二階のボクの部屋の明かりがまぶしいのだとか。・・・それはおかしい。ボクの部屋の窓にはカーテンがあり、そんなにまぶしい光は出ないはずだ。
ボクはお婆さんと一緒に外に出て、明かりが漏れるという自分の部屋の窓を見てみた。
カーテンが引かれており、窓の灯りは見えるが優しい光でまぶしいと言ったものではない。
実際にそれを見たお婆さんも、確かにまぶしくはないと認めたものの、自分の部屋から見るとすごくまぶしいのだとか。訳が分からない。
「じゃあちょっとウチに来て、寝室から見てちょうだいよ」と言い出した。
隣人とはいえ、レディの寝室に入るなど気が引けたが、仕方ない。お邪魔することにした。
案内されて行くと、お婆さんの小さな寝室は1階にあり、古びたベッドの横に小さな窓があった。木の枠で出来た昔ながらの窓だ。ボクはそこから自分の部屋の窓を覗いてみた。
「なんともないですねぇ・・・さっき見たのと同じですよ」
「違うのよ、こうやってベッドに寝てみるとね・・・」そう言ってお婆さんは横になった。
そして窓の方を指さしながら・・・「ほらほら、だんだん光って来た!! まぶしい!!」
「あれ??・・・んん??」確かにウチの窓がすごく光りはじめていた。・・・いや、違う。
これは、なにか光るものがボクの部屋の窓に反射しているのだ。
「お婆ちゃん、ちょっとこのまま、ここで待ってて!」ボクは外へ出てみた。
すると・・・お婆さんの家の屋根の上がものすごく光っていたのである。光源はここの屋根の上にあり、それがボクの部屋の窓に反射してお婆さんに見えていたのだ。
「いったいアレはなんの光だ!?」ボクは少し離れて、光源が良く見える位置を探した。
ボクは見た。それは全身がまばゆく光る人の形をしており、なんとなく以前その家に住んでいた亡くなったお爺さんの姿のように見えた。
しばらくその様子を目を細めて見ていると、もうひとつ、屋根の上に光が現れた。
それは先ほどまで一緒にいたお婆さんの姿に見えた。
「ヤバイ、もしかして・・・」ボクは急いでお婆さんの寝室へ駆け戻った。
お婆さんは息をしていなかった。ボクは急いで救急車を呼んだ。
・・・もっとも、もう遅いかもしれないが。・・・魂が抜けた後なのだから・・・。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。