私が住んでいた家の近所には小さな神社がありました。
そこには昔からあったものなのか、かなり古びた地蔵が建っているのですが、
この地蔵には「見る人によって表情が変わる」という噂がありました。
この噂を初めて耳にした小学4年生ぐらいのころ、近所の友達とその石像の噂について
話しが盛り上がり、帰りにその神社に寄って確かめることにしました。
学校が終わり二人で神社に向かうと、いつもと変わらない
目をつぶって穏やかな顔をした地蔵がそこにはありました。
ここに着く前、お互い同時に表情を言おうと決めていたので友達がOKを出すまで黙って
地蔵を見つめていると、
「いいよ」
と友達がわくわくしたような顔で私に言いました。
「じゃあ言おうか、せーの、」
「優しい顔」
「怒った顔」
「えっ…。」と友達は驚いた顔で私を見ていましたが、私も全く同じ気持ちでした。
「目のここが吊り上がってて怒ってるやん」
「いやいや全然吊り上がってないよ、吊り上がってるのは口の方でしょ」
お互いに自分の見える表情を指差しながら必死に説明するのですが、
両意見は全くかみ合いませんでした。
何度も話が食い違っていくうちに私はだんだん怖くなっていき、
「今日はもう帰ろう」
と話しを切り上げ帰宅しました。
その日の夕食時、私は家族に神社で起こった話をしました。
するとおばあちゃんが
「あのお地蔵様はね、人の心を映すんよ」
心に憎しみや罪を持つ者にはその像が怒りや嘲笑の表情を見せ、
心の平静を保てば穏やかな姿を見せるのだと教えてくれました。
地蔵の噂が本当だったことも怖かったですが、
あのとき怒った姿も見たことなかった友達が自分に憎悪を抱いていたのかもと
考えると今でも少しゾッとします。
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