陰謀論

「まー君、疲れてるんだよ。落ち着いたら連絡してね」

「工作員に気をつけろ。赤いレインコートと、ガスマスクをつけた女だ」

支離滅裂な話に、若林さんはついて行けなかった。
彼女は実家に身を寄せた。

数日たっても杉田さんから連絡が来ない。不安になった彼女は、再び同棲していたアパートへと向かった。

霧の濃い夜だった。
アパートの前にたどり着いた若林さんは目を疑った。

部屋のドアの前に、赤いレインコートを着たガスマスクの女が立っていた。

女は若林さんに気がつくと走り去り、霧の中へと消えていった。

不安になった若林さんは、急いで部屋の中へ入った。

時既に遅し。

杉田さんはクローゼットの中で首を括って息絶えていた。
自殺と断定された。

「彼は殺されたんです。私が信じなかったから……」

若林さんは身体中にアルミホイルを巻いて、そんな話をしてくれた。