山の守り人
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
〈案内って、どこへ?〉
そう思う間もなく、男は歩き始めた。
俺は急いでリュックを持って男に付いて行った。
しかし、途中で妙な事に気が付いた。
男はスイスイと木々の間を何の躊躇も無くあまりにもスムーズに、大げさに言うと、まるで決まったレールの上を滑るように進んでいたのだ。
地面のたくさんの落ち葉やゴロゴロしている石ころのせいで、俺はそのスピードに全く追い付けず男を見失った。
あきらめてゆっくり歩いていると、俺はある1本の木が目に入った。。
その木の根元には服が似ぎ捨ててあったのだ。
暗くてよく見えないが、おそらく一人分の服一式だろう。
近づいて手に取ってよく見ると、それはさっきの男が着ていた服装と同じように見えた。
〈どういうことだ?〉
そう思うやいなや、誰かから後ろから羽交い絞めにされた。
「ぐあっ、は、離せ…!」
俺は必死にもがいて抵抗していたが、後ろの人間は、どうやら全裸に近い男だとわかった。
「お前、さっきの…!?」
男は何も返事をしないで、羽交い絞めを続けていた。
しかし、男はその力にそぐわない程に体重が妙に軽く感じた。
俺は足を後ろに伸ばし、男の足の間に入れて引っかけるとあっけなく男は倒れこんだ。
男は起き上がろうとして四つん這いになり、呼吸を整えている。
俺はリュックからロープを取り出して男の後ろから首に巻き付けた。
男は観念したのか、抵抗せずに首を絞められるがままになっていた。
ロープに力を入れて絞めると、その分だけ男の首に食い込んでいった。
絞めれば絞めるほど、その分だけ首は細くなっていった。
〈何かおかしい〉
いくら締め付けていても、さすがにこれ以上は細くならないだろう。
そう、この細さは首の骨そのものといっていい。
おれはもう一度、グイっと力を入れてみた。
『ポキッ』
骨が折れた音がした。
それはまるで、枯れた細い木の枝を簡単に折ったような感触だった。
ご冥福をお祈りします。