そうこうしている内に夜の九時を回ろうかとしており、私たちは少し散らかしてしまったゴミを片付け始めました。
いつジュンちゃんの両親が帰ってきてもおかしくないので、大人しく留守番していた体裁は保たないといけません。
歯磨きも終わらせて、後はテレビを見ながら粛々と宿題に向かっているだけでしたが、意外にもジュンちゃんの両親はまだ帰ってこないようで、ジュンちゃんも頻りに時計を見ながら「今日遅いなあ」と不安そうにしていました。
このまま両親が帰ってこないのではないか。
そんな事がある筈ありませんが、私も一人でいつも留守番していると時折両親に忘れられているのではと不安になる事があるので、ジュンちゃんの落ち込み用は共感できて悲しく思いました。
それに私の両親の方も予定より遅くなるのか、いつもなら帰宅する前に電話で知らせてくれるのに一向に掛かってくる気配がありません。
そんな時、玄関から『ドン、ドン、ドン』と三回、握りこぶしを作って小指球で軽く叩いたような音が聞こえてきました。
私とジュンちゃんはビクッと音の方に振り返り、「え、何の音?」と驚いたように目配せしましたが、すぐに玄関を叩く音だと分かり、恐る恐る玄関へ向かいました。
当然ながら家の明かりはついているので家主が居る事は外から見ても明白。
それなのにインターホンを押さずにわざわざ玄関を叩くのはなぜなのか。
私たちは不思議でなりませんでした。
妙な違和感があってか、私たちは音を立てずに玄関前にやってくると、ジュンちゃんが出しっぱなしにされたサンダルに片足を立ててドアスコープから外を覗き込みます。
私はその様子を息をのんで見守っていると、ジュンちゃんが覗く真っ只中でさえもお構いなく『ドン、ドン』と玄関は叩かれていました。
でもおかしいのです。
「……誰もいないんだけど」
ジュンちゃんはドアスコープから離れて振り返ると、青ざめた表情で言いました。
「ねえ、ちょっと見てみて。ホントに誰もいないんだよ」と小さく震えるジュンちゃんに迫られて、今度は私がドアスコープを覗きます。
誰もいませんでした。
ほとんど真っ暗ですがそれなりに街灯でぼんやりと外の景色は見えます。
それなのに家の前には人っ子一人いません。
しかし、現に私が覗いているのに『ドン』と玄関を叩く音は続いていました。
「どうなってるの?」
「わかんないよ」
急に怖くなってきた私たちは玄関から離れてリビングに戻ると、テレビの音量を上げました。
この時間になると明るいバラエティ番組なんかが無くてどの局もドラマや報道ばかりでしたが、それでも賑やかしに雑音が欲しかったのです。
「イタズラかな?」
もしかしたら誰かの悪戯かもしれない。
ピンポンダッシュとか流行ってたので、たまたまこの家の玄関を叩いては隠れて家主の反応を楽しむ輩が居たのだと、私たちは考えました。
『ドン、ドン、ドン』
しかし、玄関を叩く音は定期的に鳴ります。
そのたびに二人で抱き合って震えていましたが、何回目かになるとさすがに慣れるというか、耐性がついたのか、もう一度ドアスコープから外を確かめにいったりと大胆になりました。
何度覗いても誰もいませんでしたが。
これはトラウマですね…
大人が居ないのを知ってやってきた何者かなのでしょうか
じゅん!?
怖いですね。不思議な事ってあるんですね。