ICUのゴースト (加筆修正版)
投稿者:kana (210)
「先生、患者の容体急変です!すぐICUへ!」
ボクのピッチが集中治療室へ入れとがなり立てたのは、
午後の休憩時間の時だった。
患者は4日前に救急車で運び込まれてきた男児である。
第2病日(びょうじつ)より40度の発熱。
第3病日より下痢を認め、血圧も低下。
第4病日からは応答不良となり、痙攣を伴う発作が表れたためICU入室となった。
「意識レベルGCS6、体温42度、脈拍141、呼吸数39…」
患者の状態が報告される。
全身に潮紅(ちょうこう)、眼球結膜充血も見られる。
静脈血液ガス分析を行い、頭部CTに入る。
痙攣を抑えるためにジアゼパムを静注したが5分とたたずまた発作が起こる。
「ホスフェニトインを22.5mg静注、脳波モニタリングしてください」
「気管挿管します。人工呼吸器管理開始」
「NADとAVP投与します」
ICU室内が騒然とした戦場となっている時、ボクは一瞬動きが止まった。
部屋の片隅に男の子が立っていたのである・・・。
薄っすらと青白く輝いているように見えたその子の顔は、
明らかに今ベッドに横たわっている彼の顔だ。
しかもその青白い子とベッドに横たわる子は、
細い真綿で出来た紐のようなもので、頭同志が繋がっているように見えた。
瞬間ボクは、
「早く自分の身体に戻りなさい!」
と、部屋の片隅に向かって怒鳴っていた。
一瞬、スタッフたちの動きがビクっとして止まったが、
なんでもないとその場を繕い、治療を進めさせた。
部屋の片隅にいた青白い子供ももう消えていた。
ボクはこれまでオカルトを信じたことはなかったが、
アレを見た瞬間、これは魂が離れようとしているのではないか、
と思い、ついあんな言葉が咄嗟に出てしまったのだ。
kamaです。一部誤字を訂正しました。
kamaです。たまに聞かれるんですが、この子はいったいなんの病気なの?と。
結論から言うと、熱湯で大火傷して救急で運ばれたのち、敗血症になったケースです。
臨場感があって読みごたえありました。回復して良かった。