友達が送ってきた廃墟巡りの動画
投稿者:N (13)
しかし、廃墟の中からのリアクションは無い。
その代わりと言っては何だが、ラインに『中』と催促のメッセージが届いた。
「ちょっとキモイな」
「…じゃあ、俺が中に入るから、何かあったら助けてくれ」
ここまで来たらもう中に入るしか選択肢はない。
Aは自分が中に入ってみるから、何かあったら助けに突撃するか、警察を呼ぶか、Bの応援を頼むと頭を下げた。
Aとの付き合いは五年にも満たないが、こんなくだらない事で嘘を重ねるような人間ではないことは分かっている。
もちろん、俺もここまで来たからには端から一緒に付いていくつもりだ。
「俺も行くよ。もし変な奴だったら二人のほうがいいだろ」
「マジ助かるわ…」
お前はそれしか言えんのかと思いつつ、Aが先頭に立って朽ちた玄関を開いた。
動画で見た光景そのものだったが、実際に見ると雰囲気が段違いだ。
マジでホラー映画の世界に迷い込んだみたいだし、冷たい空気の感覚や家中に染み付いた変な匂いが鼻にくる。
「おまえよくこんなところ一人で入れたな」
「俺、虫以外なら結構平気」
Aの中では変な輩や幽霊なんかよりも虫が最上位で苦手みたいだった。
「すみませーん、どこですかー?」
Aが叫ぶと数秒後にメッセージが来る。
『二階』
そのメッセージを見て、Aは「うげ、よりによって虫が居るところじゃん。嫌がらせかよ」と心底嫌そうな顔をしていた。
ちなみに俺も心底嫌だった。
だって、二階の右手側の部屋。
あそこの中にAは虫が居たというが、俺が動画を見た限りでは別のものが居たわけだ。
「なあ、A。お前、二階の右側の部屋で虫を見たの?」
「おう。ライトつけた瞬間部屋中にうじゃうじゃしてて心臓止まるかと思った」
俺は少し間を置いてからもう一つの疑問を訊ねてみた。
「お前、一人で来たの?」
「おう」
俺は少し俯きながらAが階段を上る後ろに続く。
Aがドッキリを仕掛けていたり、嘘をついていけなければ、俺に送られてきた動画の方がおかしいということになる。
もし本当にAが一人で廃墟を巡っていたなら、所々に映り込んだ人影は仕掛け人じゃない、本物という事になるんだが。
大作ですな
読みやすくて一気読みでした
12ページもあったから読むか迷ったけど読んでよかった
夜中に一気読み!面白かった!
想像してただけで心臓が早く波打つのがわかった。
長いのもあってか結構怖かったわ(笑)