【クモ男事件】-事件記者 朽屋瑠子-
投稿者:kana (216)
「お客様におしらせします。ただいま停電が発生したため列車一旦停止しております」
列車内に案内放送が流れる。停電でほぼすべての灯りが消えているが非常灯が点いているので真っ暗ではない。
「どうします蜘蛛さん、行きますか?」
胸の大きな女性が隣にいる黒ずくめの男に質問した。
「あぁ、アゲハさん、仕方あるまい。片付けましょう」
黒ずくめの男が長い手足を伸ばし席から立ち上がろうとした時、何かが頭を小突いた。
「ハ~イ、ストップ。動かないで。大人しく席に戻って」
朽屋瑠子である。彼女が拳銃を蜘蛛と呼ばれた男の頭に突き付けている。
「ハ~イ、彼女どこかで会ったことあったかな?」
悪びれもせず応えるクモ男。おびえた目でこちらを見つめるアゲハ。
「クモ男さん、拳銃なんて効かないよって思ってるでしょうけど、
あなたもそれなりに魔力をお持ちなら、この拳銃に込められている弾丸が普通じゃないのはわかるはずよね」
「ふむ・・・。確かに、そうらしいな。何かしらの『霊力』が感じられる。
どうやらオモチャじゃないらしい」
朽屋瑠子が携帯して持ち込んだ拳銃はベルギーのFNハースタル製の最新機種Five-seveN Mk3だ。弾は5.7×28mmという軽量の高速弾で、9ミリ口径の拳銃弾が貫くことのできない防弾チョッキも貫通する。また芯に工夫がされており、万が一跳ね返った時などは一気にエネルギーがロスされ、跳弾の危険性を下げている。つまり、室内戦闘で非常に高い戦闘力を持った銃だということだ。ちなみに、この拳銃は標準20発装填可能であるが、先ほど言っていた『霊力』を込めた弾丸は、現状朽屋には3発用意するのが限界である。
「あなたたちって、やっぱり蜘蛛と蝶なの?彼に殺されたって言う?・・・つまり妖虫さん?」
蜘蛛の代わりにアゲハが応える。
「えぇ、ハイそうです。そこまでご存じなんですね」
「彼がね、あなたたちのこと・・・つまり、まだ虫だったころのあなたたちの事を覚えていてね、殺したことをずっと後悔してたのよ。それでね、この間のバス事故の時も、復讐に来たんじゃないかって。そうなの?」
クモ男が応える。
「最初の頃は、そんな風に考えていたこともありました・・・。でも遠い昔です」
アゲハ蝶が応える。
「私たちにとって・・・生きることと死ぬことは同価値だと思うんです。
みんな生きて、みんな死んで、誰かの命になって繋がって行く・・・
だから殺されたこと自体は復讐する必要はないんじゃないかって、蜘蛛さんと話していました」
クモ男「そうさな、あの後結局アリたちが食料にしてたから、命は無駄にはなってない。
だけど、自然の摂理から言えば、殺した者がちゃんとオレたちを食べるべきだよ」
アゲハ蝶「あはは。でも人間って虫食べないでしょ(*´▽`*)」
クモ男「うん・・・まぁ大体はな。それに彼、あの後から虫とか植物とか自然を大事にするようになってね。だから許してやろうかなと思ってたんだ・・・」
新年あけましておめでとうございます。kamaです。
こちらの作品を読む前に、前日譚として私の作品、
「恐怖! 地獄極楽夜行バス」を御一読されると、より作品が楽しめるかと思います。
また前作「事件記者 朽屋瑠子」も併せてお読みいただくと、より世界観が広がって楽しめるかと思います。よろしくお願いします。
元日早々に第二段投稿するとは早い。