【クモ男事件】-事件記者 朽屋瑠子-
投稿者:kana (216)
「途中下車したと・・・。でも、事故を起こしたバスからはそのような血痕などは見つかっていないですよね」
「そうなんです。実際その『手品』をやっている時も、女の子は静かに眠っていて、血も一滴もでていないんです。
でも、あの質感は・・・とても作り物には見えなかったし・・・今思い出しても吐き気が・・・
アレは夢なんかじゃない。もっと奇怪な・・・」
「何か確証がおありのようですね」
「実はその・・・あの人たち、蜘蛛と蝶の化身なんじゃないかと思えて・・・
なんだか余計に夢物語に聞こえるかもしれませんけど、ボク、子供の頃から蜘蛛が大嫌いでして、ある時、蜘蛛の巣につかまってる蝶を見つけて、それを蜘蛛が襲おうとした時に、
思わず石を投げつけて、両方とも殺してしまったことがあるんです。・・・それがずっとトラウマで」
「なるほど。でも、それだとおかしいですよね?」
「はい?」
「殺された蜘蛛と蝶が恨みを晴らすためにやって来たのに、
結果的にあなたは助かっている。なぜ?」
「・・・そこなんですよね・・・。ボク、助けられたんですよね・・・辻褄が合わない・・・」
「ですよね。警察のように夢まぼろしとは言いませんが、呪いや恨みでもなさそうですよね」
「・・・そう・・・ですね」
「まぁこうなったら、テーマパークでパーッと遊んで、全部忘れちゃうってのはどうですか?」
「そうですね・・・そうします!ボクもそれがいいと思います。ありがとうございます朽屋さん」
朽屋の取材は一見なんの成果もあげられずに終わったかのように見えた。
が、朽屋はずっと誰かに見張られているような気配を感じていた。
自分ではなく、この彼氏・彼女のふたりが、である。
きっと何かある、と朽屋は直感していた。
・・・・・・
それから2週間ほどたったある日。
二人の男女が東京駅の新幹線ホームに立っていた。向うは地方のテーマパーク。そう、朽屋がプレゼントした招待券を持った二人が、いままさに新幹線に乗り込もうとしている所だ。
そしてその後ろをヒタヒタと忍び寄る二つの影があった。
あの夜行バス車内にいた黒服の男と、若い女性である。
彼らは一つ後ろの車両に乗り込んだ。
真っ黒な不安感を乗せ「のぞみ」が出発する。
東京駅を発って35~6分経った頃、東海道新幹線で最長と言われる
新丹那トンネルに入ったところで、突然列車がブレーキをかけ停車した。
新年あけましておめでとうございます。kamaです。
こちらの作品を読む前に、前日譚として私の作品、
「恐怖! 地獄極楽夜行バス」を御一読されると、より作品が楽しめるかと思います。
また前作「事件記者 朽屋瑠子」も併せてお読みいただくと、より世界観が広がって楽しめるかと思います。よろしくお願いします。
元日早々に第二段投稿するとは早い。