賃貸の一軒家に引っ越した結果
投稿者:N (13)
これで休暇明けに妻がまたおかしくなってたら無理矢理にでも病院に連れていこう。
そう考えてた。
金曜日、妻は俺と赤ん坊の朝ごはんを用意してくれた後、家を出た。
これから二日間、俺と赤ん坊の二人生活が始まるのだが、家事に追われていると赤ん坊に目が行き届かない事もあり、育児中の主婦の大変さを痛感する。
それでもうちの赤ん坊はほとんど泣き出さないので手がかからず助かっているが、夜泣きが激しいところはこの数倍は大変なのかと思ったら我が子に感謝したくなった。
昼時、赤ん坊をベビーベッドに寝かしつけている間、一階で掃除機をかけてる時のことだった。
一区切りして掃除機のゴミをまとめていたところ、二階から赤ちゃんの泣き声が微かに聞こえたので、「あ、珍しく泣き出した」と駆け足で二階へ向かう。
我が子ながら大人しいとは思っていたが、こうして日中ではしっかり泣いてるんだなと分かれば、大変ながらも嬉しく思えた。
そして、寝室を覗いた俺は、違和感に襲われる。
泣き声が聞こえないのだ。
確かにさっき赤ちゃんの泣き声が二階から聞こえたと思ったのだが、ベビーベッドを覗き込んでも天使のような寝顔を浮かべてる我が子の姿しかない。
うっかり隣家の赤ちゃんの声と聞き間違えたかなとは思ったが、そもそも隣家に赤ちゃんがいるなんて話は聞いた事が無い。
挨拶に回った時も、幼児は居ても赤ちゃんの居る家庭は居なかったと記憶している。
もしかしたらこれが幻聴なのかもしれない。
よくゲームとかに熱中していると眠る際に脳内でそのBGMが繰り返される事があるが、赤ちゃんの泣き声も毎日聞いているとこうやって幻聴として聞こえる事があると聞く。
即ちストレスのせいかもしれない。
俺も仕事と育児でそれなりに疲労が溜まっているのだろうか。
まあ、苦には思っていなくても、体が疲れているなんて事はよくある話だ。
俺は我が子のぷにぷにしたほっぺをツンツンした後、家事の仕事に戻る事にした。
夕刻、家事を終えた俺は赤ちゃんをリビングに移して夕飯の準備をしていた。
そういえば風呂とかどうすればいいんだろ、なんて些細な問題を疑問視しながら適当に自分のご飯を作ってたら、また赤ちゃんが泣きだした。
それですぐに赤ちゃんの許に駆け寄ったんだが、今回も幻聴だったらしく、赤ちゃんは無邪気な目で俺の事を不思議そうに眺めていた。
どう見ても今さっきまで泣いていた顔つきじゃない。
また幻聴か。
俺はため息をつきながらも赤ちゃんを抱き抱えて揺り篭のように揺らしてやると、赤ちゃんのキャッキャとはしゃぐ姿に癒された。
「おまえは本当に手がかからないな。たまには泣いてもいいんだぞ?」
どうせ伝わらないだろうが、赤ん坊は泣くのも仕事だ。
しばらく赤ちゃんと遊んでいると流石に俺も眠たくなったので、一階にも置いてるベビーベッドに赤ちゃんを寝かしつけて少し仮眠をとる事にした。
作ったご飯は一端ラップにくるんで起きたら食べよう。
赤ちゃんが寂しくないように暗くなる前に電気もテレビも点けておいて、俺は赤ちゃんの横のソファに座ってうとうとし始めた。
いや怖いよ