酔っ払いが家を間違えて入ってきた
投稿者:with (43)
「〇〇」
その場所はここから歩いて十分もしない近場だった。
「近いね」
「なんか捕まった人は下着ドロボーらしいよ。留守だと思って空き巣に入ったら出くわして思わず殴っちゃったって」
「へー。なんでそんなことまで知ってんの?」
「おばさんから聞いた」
おばさんは何者なんだよとツッコミたかったが、俺は相槌しておいた。
しかし、世の中物騒だ。
まあ、俺には関係のない話だと思い、風呂でも入ろうかなと立ち上がった時、彼女は思い出したかのようにニヤニヤしながら口を開く。
「でね、なんでもその犯人、酔っ払って家を間違えたフリをして入ってきたんだって。酔っぱらってれば怪しまれずに人の家に入りやすいのかな?」
彼女の言葉を聞いて俺は固まった。
あの時家に上がってきた酔っ払いのおっさんを思い出していた。
いや、あのおっさんがその下着ドロボーとは確定してないけど、まさか……。
これは後で聞いた話なんだが、暴行事件の被害者は偶々鍵を閉めずに帰宅してすぐに眠っていたらしく、何となく物音が聞こえて起きた所で犯人とばったり遭遇して近くにあった物で頭を殴られたらしい。
それで悲鳴を上げたお陰で近隣住民が廊下に出てきて、ちょうど部屋から逃走する犯人とこれまたばったり。
すぐに警察に通報して御用となったそうだ。
因みに、この情報筋はおばさん。
本当おばさんは何者なんだろう。
まあ、単純に町内会とかでこの辺の情報が回ってるだけなんだろうけど。
俺は彼女からこの話を聞いた時、あの晩の酔っ払いのおっさんの話はしない方がいいと思った。
あのおっさんがもし下着ドロボーだとしたら、たぶん、俺が彼女の下着をそのまま干してたから若い女が住んでると思って酔っ払いのふりをして部屋に上がり込んだのかもしれない。
もし俺が彼女の部屋に間借りしていなければ…。
もし彼女が法事で留守にしていなければ…。
そう考えるだけで少し怖くなった。
この日以来、俺はちゃんと戸締りをするようになり、洗濯する時は女性ものの下着は室内干しか、或いは俺の大きめの服の影に置くようにして干す事を心掛けた。
彼女を守るのは俺の使命なのだ。
あのおっさんが本当に犯人なのかは分からないが、おっさんが俺の意識を変えさせたのは間違いない。
それから一か月後、俺は洗濯物を干している時にそういえばあのおっさんとばったり会うことが無いなーなんて思い、さすがに時間も経ったし彼女にあの晩の話をしても大丈夫だろうと打ち明けてみる事にした。
「で、そのおっさんを三階まで送ってあげたんだよ」
俺が酒を飲みながら彼女にあの晩の体験を話し終えると、彼女はこう言った。
こういうの実際にあるんだろうな。怖いな。
わざとお酒臭くしてるんだろうか。
ええ彼氏や
別れた後に新たな彼女は出来たかしら?
おっさんに彼女取られたか
人の家に居候してる身分で鍵ちゃんとしないから振られるんだよ
こういう系で被害に遭った知人女性いるけど、変態とか犯罪者って思ってるより身近にいるのかもね
怖いけど、申し訳ない、ところどこで笑ってしまった
withさん。こんなお話も書くんだ。ラストで笑ってしまったけれど、よくよく考えて見れが、彼女さん、いろんな偶然が重ならなければガチで犯罪に巻き込まれるところだったんだ。案外、長い目で見ると逃した魚は大きかったかもなぁ。
酔っ払いのフリしてわいせつなことする犯罪者聞いたことある!
「彼女を守るのは俺の指名なのだ」
戸締りも出来ねぇ奴が何言ってんだ?