酔っ払いが家を間違えて入ってきた
投稿者:with (43)
どうやらこのおっさんの素性は三階に住んでる松永という事が分かったが、おっさんは俺に深々とお辞儀をし始めたかと思えばウトウトと船を漕ぎだす。
こんなところで本格的に眠られたらかなわない。
そう思っておっさんの頬を軽く叩いて、さっきまで酒の肴にしていた裂きイカを差し出してみれば、思惑通りおっさんは餌に食いついて「ああ、いいの?」なんて言いながら手づかみで食べ始めた。
「それあげるから早く出てってくださいよ」
「おいしいね、これ」
俺は会話にならないおっさんの背後に回って脇の下に手を突っ込んで一気に持ち上げる。
腰が抜けるかと思ったが、まだおっさんが立ち上がろうとする意識があるおかげでなんとか立ち上がらせる事ができた。
その際、キッチン戸棚や壁に体をぶつけて痛かったが、おっさんもところどころぶつけたのか「いたい、いたい」と嘆いててちょっと面白かった。
そして何とか玄関土間からアパートの廊下に連れ出すことに成功すると、ふらつくおっさんの両肩をもって直接させる。
「ちゃんと帰れます?」
「ああ、はい。おつかれまさですー」
相変わらず会話にならないおっさんは頭を深々と下げて、そのまま床に頭から突っ込みそうになったから、俺は咄嗟に腕を伸ばして上半身を支える。
こうなったら仕方がない。
三階まで送るか。
俺はおっさんの腕をとり肩に回すと階段で上の階まで送り届けることにした。
その最中もおっさんは「これはご親切にどうもです、はい」と酒の臭いを漂わていた。
三階に到着するとおっさんは「ああ、もう大丈夫ですよ。ここです。はい。はい」と呂律の回らないまま腕を離すと、再び深々と頭を下げる。
またバランスを崩して床に突っ伏すのではとひやひやしたが、おっさんは二歩ほど足踏みをして何とか耐えていた。
そして、おっさんは「ありがとうごぜーまふ」とよたよたと壁を伝いながら三階の廊下を亀のように進んでいった。
さすがにここまで送れば大丈夫だろうと思った俺は「お大事に」と聞こえているのか分からないおっさんに声を掛け、そういえば洗濯物を取り込まなければとそそくさとその場を立ち去った。
自宅に戻りベランダに出ると、彼女のパンツがゆるやかな夜風に靡いててちょっと申し訳なかった。
ほとんど彼女の衣服や下着類だったから夜中とは言え、野晒しにしてしまった事を今更ながら申し訳なく思い、すぐに取り込んだ。
そんな事があった二日後、彼女が帰宅した。
俺はさっそく彼女の留守中に面白いおっさんが部屋を間違えて入ってきた話をしようと思ったんだが、それよりも先に彼女が話題をふってきたので後手に回る。
因みに彼女の話は「この辺で暴行事件があったんだって」との内容だった。
「へー、いつ?」
「昨日だって。さっきおばさんから聞いた」
おばさんというのはこのアパートの一階に住んでいる大家のことだ。
俺もたまに挨拶する仲だが、そういえば昨日は残業で会ってなかった。
俺が残業している間にそんな物騒なことがあったのかと思い、俺は彼女に「戸締りしなきゃなー。どこであったの?」と明日は我が身と思いながら聞いた。
こういうの実際にあるんだろうな。怖いな。
わざとお酒臭くしてるんだろうか。
ええ彼氏や
別れた後に新たな彼女は出来たかしら?
おっさんに彼女取られたか
人の家に居候してる身分で鍵ちゃんとしないから振られるんだよ
こういう系で被害に遭った知人女性いるけど、変態とか犯罪者って思ってるより身近にいるのかもね
怖いけど、申し訳ない、ところどこで笑ってしまった
withさん。こんなお話も書くんだ。ラストで笑ってしまったけれど、よくよく考えて見れが、彼女さん、いろんな偶然が重ならなければガチで犯罪に巻き込まれるところだったんだ。案外、長い目で見ると逃した魚は大きかったかもなぁ。
酔っ払いのフリしてわいせつなことする犯罪者聞いたことある!
「彼女を守るのは俺の指名なのだ」
戸締りも出来ねぇ奴が何言ってんだ?