どれぐらい前だったかは忘れましたが、ある日の夕方、会社帰りの客で混雑しているスーパーでのことです。
レジの長い列に並び、やっと前の人の番になった時、その人の買い物かごの中身に目が釘付けになりました。
それはかご二つ分山盛りで、うまい棒やよっちゃんいかなどの駄菓子に、からしやタバスコのような調味料、きゅうり一本やじゃがいも一個といった野菜など、とにかく細かいものが大量に入っていました。
人の買うものをじろじろ見るのも失礼だとは思いつつ、あまりの量だったので、これはレジのおばちゃんも大変そうだなあと思いながら見ていました。
ふとその持ち主に目をやると、三十代半ばくらいの、髪の長い背の高い女性でした。
クリーム色の、所々にフリルのついた長いワンピースを着ていて、肩からは合皮の剥げたようなピンク色のポシェットを下げていました。
女性は軽く口を開けたまま、ひとつひとつバーコードを読み取るおばちゃんの手元をじっと見つめていました。
そうして少しずつかごの中身が減っていき、ようやく最後の商品を読み取ったおばちゃんが顔を上げ、
「○○円になります」
と言うと、女性はおばちゃんの顔を見つめ、
「……あ、やっぱりいいです」
と言って、すっと出口の方へ歩き出しました。
唖然としながら、その後ろ姿をおばちゃんと見ていると、女性はふいにくるりと振り返りました。
そしてこちらを見たままうしろ歩きをすると、にやっと笑い、突然目を大きく見開いて舌をべっと突き出したのです。
次の瞬間には再び前を向き、何事もなかったように店の外へ出ていきました。
今でもあの時見た、まんまるに見開いた目と、白っぽく長い舌が忘れられません。

























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