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ヒトコワ

ドライアイスさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

ピンポンの間隔
短編 2026/06/11 20:22 342view

これは、私が2年前に都内のワンルームマンション(仮にAマンションとします)に一人暮らししていた頃の話です。

当時、私は大学を卒業したばかりで、とにかく家賃を抑えたくて、駅から徒歩20分以上かかる少し寂れた物件を選びました。
作りは古かったんですが、角部屋で日当たりも良く、最初は特に不満もありませんでした。

異変が始まったのは、入居して3ヶ月が経った秋口の頃です。

夜の11時を過ぎたあたりで、インターホンが鳴るようになりました。
「ピンポーン」って、普通の音です。

最初は「あ、誤操作か、上の階の人が間違えたのかな」くらいに思っていました。
その時は出ずに無視したんですが、次の日も、その次の日も、同じくらいの時間になると必ず1回だけ鳴るんです。

さすがに気味が悪くなって、鳴った瞬間にのぞき窓(ドアスコープ)から外を確認することにしました。

でも、誰もいない。

外灯に照らされた無人の廊下が伸びているだけでした。

「これ、近所のガキの悪戯(いたずら)か?」とも思ったんですが、夜の11時過ぎです。それに私の部屋は3階の突き当たりで、もし誰かが走って逃げたら、足音くらいは聞こえるはずなんです。でも、インターホンが鳴った直後も、廊下は水を打ったように静まり返っていました。

それが1週間くらい毎晩続きました。
だんだん夜の11時が近づくだけで動悸がするようになって、正直、ノイローゼ気味になっていました。

ある日、大学時代からの友人(仮にKとします)にこの件を相談したら、「じゃあ今日、俺が泊まりに行って確かめてやるよ」と言ってくれたんです。
凄く心強くて、その日は久しぶりに少しホッとしたのを覚えています。

その日の夜、私とKは部屋の電気を消して、息を潜めて11時を待ちました。

スマホの時計が11時12分を指した時、案の定、鳴りました。

「ピンポーン」

心臓が跳ね上がりました。

Kはすぐに立ち上がり、ドアに駆け寄ってのぞき窓に目を押し付けました。私もその後ろに並びました。

Kはしばらく外を覗き込んでいましたが、すぐに怪訝(けげん)な顔をして私を振り返りました。
「……やっぱり誰もいないな。でもおかしい。インターホンのボタン、押されたまま戻ってないぞ」

私の部屋のインターホンは古いタイプで、ボタンを押すと少し凹み、指を離すとカチッと戻る仕組みでした。
Kがドアを開けて外のボタンを確認すると、確かにボタンは普通の位置に戻っています。

じゃあ、なんで「押されたまま」だと思ったのか。

Kが青い顔をして言いました。
「いや、のぞき窓からボタンが見えるじゃん? 誰もいないのに、ボタンが『指で押し込まれた状態』のまま止まってたんだよ。お前がドアを開けた瞬間に、パッと元に戻った」

その言葉を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立ちました。
誰かが透明な力で押しているとか、そういうオカルトな怖さじゃない。何かもっと、生理的に受け付けない嫌な予感がしたんです。

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