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ヒトコワ

件の首さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

上がる女
短編 2022/09/16 23:05 2,054view
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 僕はとある13階建てマンションの7階に住んでいる。
 他の住人との付き合いはないが、よくエレベーターに乗り合わせるその女性については、顔を覚えていた。
 彼女はいつも4階でエレベーターに乗り込む。つまりその階の住人だろう。
 ほっそりとした優しげな美人だが、どことなく暗い表情が印象的だった。

 ところが昨年の3月に入った頃、彼女の表情が急に明るくなった。
 何か良いことでもあったのか、それとも悩み事が片付いたのか、一度も会話をした事がない相手に、わざわざ尋ねるようなものでもなかった。

 それから数日。
 僕は年度末の残業で、終電ギリギリに帰宅となった。

 エレベーターに乗り、自分の部屋のある7階まで上がっていると。
 4階でエレベーターが止まった。
 乗り込んで来たのは、彼女だった。
 手には、市の指定ゴミ袋を提げており、ゴミ捨てに降りるようだった。
「上ですよ」
 僕は声をかけた。
 7階に行くエレベーターだ、4階の彼女が乗る理由がない。
 だが、彼女は無言で会釈するだけだった。

 どうせ乗っていれば最後には下がるから面倒になったのかな、と思い、それ以上聞かずドアを閉めた。
 彼女が持つゴミ袋は45リットルの一番大判なものだったが、中に入っているものは小さそうだった。
 色々考える間もなく7階に到着して、僕はエレベーターを降りた。
 背後でエレベーターの扉が閉まる音を聞き、ふと振り返ると、彼女を乗せたエレベーターは上にあがって行った。

 翌々日。
 受水槽、いわゆるマンションの水タンクから、バラバラ死体が発見された。
 犯人は彼女で、被害者は彼女の夫だった。
 殺害動機はDV苦で、何故受水槽に捨てたのかについては、「運ぶのが大変だったから」と供述したそうだ。

 だとしたら。
 あの時は、一体どこを運んでいたのだろう?

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関連タグ: #エレベーター#声
コメント(1)
  • 受水槽に・・・
    DVから解放されたとは言え何とも言えない話ですね。

    2022/09/18/14:35

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