行方不明になった友人の話
投稿者:七色 (4)
助けに行きたいが、助けに来てほしい。
そんな切羽詰まった状況の中、俺はどう行動するのが最善なのか足りない頭をフル回転させていた。
だが、俺が答えを導き出すより早く、廊下の奥から、
「あああ……!た、たた、たすけて!」
と、情けない様な、腹の底から震え上がった悲鳴が聞こえてきた。
相当怯えているのか、震え上がった声は細く伸び切ったもので、芸人のク〇ちゃん顔負けの甲高い声色だった。
普段のBの声色は低いので、それだけでもBの状況が手に取る様に想像できた。
そして、Bの悲鳴を聞いた俺は自然と体が動き、和室を飛び出していた。
天袋の恐怖に雁字搦めとなった鎖を解き、押し入れを横切って廊下を覗き込んだ。
ただ、俺の振り絞った勇気は廊下を見た途端、脆くも崩れ去る。
廊下を見ればその最奥にBが落としたスマホが転がっているのかライトの明かりが上向きに放っている。
そのすぐ近くに座り込んで壁にもたれ掛かっているBが辛うじて見えたが、そんなBの正面に白装束の人影がぼんやりと浮かんでいて、Bを見下ろしていた。
その人影が男性なのか女性なのかは分からない。
何故なら頭部が無い様に見えるからだ。
加えて、白い羽織の様なものからすらりと伸びた白い手足は常人のものより遥かに長かった。
全長も恐らく2メートルを超えているのか天井すれすれまで高く、丸まった猫背に両腕をだらんとぶら下げている状態だった。
到底この世のものとは思えないソレは「ペタリ、ペタリ」とBとの距離を詰めていく。
あれは一体何なんだと目を見開いて眺めていると、俺の背後からも「ススス」と音が聞こえてくる。
今の俺は和室の入口の敷居の上に立っている状態で、つまり、一歩下がると横に押入れがある。
即ち、少し振り向くだけで天袋が見える。
今の「ススス」という音は、間違いなく襖が開く音だった。
前には白装束の「何か」。
すぐ後ろからは天袋を開ける「何か」。
この家は一体全体どうなっているんだと歯噛みしていれば、「ススス…トン」と、完全に天袋が開封された音が俺を現実に呼び戻した。
そして、どうしてなのか、俺は絶対に振り返りたくない思いでいっぱいだったのだが、誘導される様に徐に振り向いてしまう。
嫌だ、振り返りたくない。
そんな気持ちを強く念じていたが、廊下の壁、和室の縁、砂壁、そして押し入れの枠へと視線が流れていくと、天袋に向き直る事になる。
「あっ……」
天袋の中からミイラに似た顔の頭部が横たわる様にして俺を見ていた。
削がれた様な鼻筋やむき出しとなった歯茎。
それなのに、陥没した様な眼元の奥からは確かに生きている人間と変わりない目玉が動いていた。
読み応えあって面白かったです。
そういえば廃墟系のYouTuberで実際に行方不明になった人いませんでしたっけ…
心情の表現や状況を表す言葉が秀逸で、洒落怖ばりに鬼気迫る恐怖が凄く伝わりました。廃墟系YouTuberの方々にも周知させたいお話ですね。
長編なのに読んでいてしんどくない。細部の描写が凄いです。風化して粉まみれのボタンで感動しました、これは知らないと書けない…
その廃墟、第二の犠牲者が出ない事を願うばかりです。
恐ろしい体験でしたね。
気を強く持たないと。
その時の様子が鮮明に想像できます。細かい描写で分かりやすい。
絶叫しそうになった
めちゃくちゃ面白い
映像化してほしいくらい
凄く怖いかったです。この話は良かった。
いつか読んでる中でダントツ怖い。
ほんまにこえぇわこれ
ここ数年で1番怖かったかもしれない
文体に独特の書き癖があってときどき気にはなるが、内容は怖かった。
例のミイラ男がAなのかな?
とにかく読ませる怪談。今時パスワードや指紋認証ロックしていないAのガバガバさぶりはアレだが
怖すぎる…家の玄関が誰もいないのに明かりがついたことあるけれど
それ以上怖い…
今まで読んだ中で1番怖かったかも
若干最後の方に蛇足感じたけど面白かったわ。ありがとう。
低学歴ワイ、意味を知らない言葉複数あり
役所で名前が記録されていればおおよその事は分かるはずだよ、日本人なら
怖いねえ
大丈夫。ずっと見ているよ
マジで怖かった。傑作
あの頭部はAのものではないの?
Aと同じセリフを履いたよね。
そーやって呪いが繰り返される展開を想像した俺はこーゆーの身過ぎかね
Aは怪異から逃げ続けているから会えないのではないか
傑作。昼に出る怪異はガチ勢というが、まさにという感じ。
ビデオ動画、LINE、天袋に襖といった、正統ホラーの技巧にワクワクさせられつつ、2方面戦線からの合体という驚きもあって。
とても面白かった。
あかんめっちゃこわい
映像化してほしい
怖いです。漏れそう