ドアを叩く正体
投稿者:七色 (4)
一人暮らしを始めて早一年と少し。
俺は築20年くらいの1DKに暮らす大学生だが、最近夜にあまり眠れていないのが悩みだ。
と言うのも、いつからだったか決まって深夜の2時頃に玄関ドアをドンドンと叩かれるからだ。
始めは気付かず寝ていたのだが、どうにも俺が起きて来るまで叩くのを止めないようで、始めに寝ぼけ眼で音に気付いた時は心底驚いたものだ。
勿論チャイムの電池は切れていない為、インターホンを押せば音は鳴る。
それでもチャイムを利用せずにドアを叩いているのは、深夜という時間帯に配慮しての事だろうと思い、俺も最初は大家か何かかと思って恐る恐るドアスコープを覗いていた。
「あれ…?」
しかし、玄関先に人の姿はない。
音が止み、ドア一枚隔てた土間で、俺は茫然自失と佇んでいた。
音が止んだという事はドアを叩いていた人物が立ち去ったと考えるべきだろうが、あまりに立ち去るタイミングが出来過ぎている。
まさか悪戯の類か?と思い、俺は勇気を出してドアを半分だけ開けて、隙間から顔を出して廊下を確認する。
俺の部屋は年季の入ったアパートの二階で、廊下と言っても簡素な通路と鉄柵があるだけで、アパートの正面は道路を挟んで民家が建ち並ぶだけだ。
通路に誰も居ない事を確認して俺はドアを閉めて再び就寝する。
そんな不思議な出来事が連日連夜繰り返される音の発端となり、既に三週間近く深夜のドアドンは続いている。
ただ、俺も暇ではないからバイトで留守にする事も多いし、友達の家に泊まる日もある。
ドアドンの犯人が毎日来ているのかは知らないが、決まって俺が自宅で寝ている日は深夜にドン!と叩いているみたいだ。
俺はそんな事を友達に話すと、友達は「ふーん」と軽く足蹴にするように突き放した。
かと思えば、課題のレジェメ作りに没頭している様に見えて実は真面目に聞いてくれていたらしく、ノートパソコンのキーボードを連打しながら意見をくれた。
「毎回外を確かめると逃げられてんなら、もしかしてスコープから逆に覗かれてんじゃね?外からも見えるらしいし、アレ」
友達の助言を受けて俺はすぐに某検索エンジンを使って調べてみる。
何でも単眼鏡を使えば簡単に内部を覗き見る事ができるそうで、そうした盗撮の手口も広がっている事を知った。
「サンキュー!いっちょ犯人あぶり出してみるわ」
「お、おう。死亡フラグになるなよ」
「フラグじゃねえよ」
俺は友達に感謝を伝えて次の講義に出席する為立ち去るが、去り際に友達が不穏な事を言い放ったものだからちゃんと抗議しておいた。
当日、俺は自宅に戻るとドアスコープに目張りを貼り付ける。
百均で購入した黒いテープだが、これだけで外から覗くことは不可能だろう。
後はドアドンが鳴った時に音を立てずに玄関までやってきて、逆に覗いてやるだけだ。
犯人がどんな顔をした人物なのか少し興味あったから、自分の事ながら少し楽しく思えた。
夜中、いつの間にか寝入っていると、例のドン!ドン!と叩く音で目が覚めた。
こわ
最後はアッー!ということでしょうか
お幸せに
同居させてもらってた時から、うっとり瞬間は何回かあったはず