ひとりじょうず
投稿者:ねこじろう (154)
長編
2022/09/05
15:28
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とまた、あの低く掠れた女の声で言いかけたかと思うと、
「ママ、その話はもう止めてくれよ。
それはもう終わったことなんだから」
と、悠太の横顔を見せながら困ったような様子で遮る。
─何なの、これは?
わたしの頭の中は理解の限界を越えようとしていた。
まるで親子が言い合いをしているかのような声が飛び交う中、わたしはジリジリと後退りすると、
「ごめんなさい!」
と大声で言ってピシャリと襖を閉め、玄関に向かって全力で走った
転がるように階段を一気に一階まで降りると、大急ぎで車に乗り込み、慌ててエンジンをかけ、思い切りバックする。
そして走りだす直前、フロントガラス越しに、ふと3階のベランダに目をやった時だ。
再びわたしの背中はぞくりと粟立った。
サッシ窓から漏れる室内からの光にボンヤリ照らされた二人が並び立ち、柵に手を乗せじっとこちらを見ている。
一人はライトブラウンのかつらに真っ赤なワンピース姿の悠太で、
もう一人は、、、
白いネグリジェを着た白髪の痩せた女だった。
【了】
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