事故物件の死神

事故物件に引っ越して来てすぐの頃のことです。

夜中の二時頃だったでしょうか……僕は喉の渇きを覚えて目を覚ましました。

水でも飲もうと部屋を出て台所に向かいました。

すると、廊下を歩いている時に妙な物音が聞こえてきたんです。

何だろうと思って耳を澄ませてみると、「コツ……コツ……」という足音のようなものが響いてきていました。

それは誰かがこちらに向かって歩いてくるような足音のようでしたが、辺りを見回しても誰もいません。

気になった僕はその足音の正体を確かめるために後をつけてみることにしたのです。

そして足音のする方へ歩いていくと、そこはトイレでした。やはり気のせいではなかったようです。

どうやら何者かがこの家の中を徘徊しているらしく、今もなお「コツ……コツ……」という不気味な足音をたてながら歩き回っているようでした。

しかし一体誰がそんなことを？そう思ってよく見てみると、トイレの中にぼんやりとした人影が見えました。

あれは何者なんでしょう……。

僕は恐ろしくなってその場から逃げ出そうとしました。

ところが次の瞬間、背後から凄まじい悲鳴が響き渡ったかと思うと、僕の身体に強い衝撃が加わりました。

振り返ると、そこにいたはずの人物が消えており、代わりに大きな鎌を持った死神のような化け物が立っていました。

一瞬の出来事でした。

僕にはそれが何なのか理解できませんでしたが、恐らくアレは死神なのでしょう。

僕は死神に襲われてしまったのだと思います。

こうして僕の事故物件での一人暮らしが始まりました。

今のところは何もありませんが、油断はできない状況です。

いつあの死神が現れるかもわかりませんし、もしかすると既に僕の命を狙っているかもしれません。