キャンプで見た化け物

私が小学生の頃、夏休みに家族でキャンプに行った時のことです。

キャンプ場の近くには湖がありました。そこは遊泳禁止だったのですが、私達は大人達に内緒でこっそりと泳いだりもしました。

夜になり、夕食を済ませた後、テントの中で就寝時間までトランプをして遊んでいたのですが、突然父が

「そろそろ寝ようか」

と言い出しました。

その時は

「もう？まだ眠くないよー！」

なんて言いながら渋々布団に入ったのですが、やはり昼間たっぷり遊んだ疲れがあったのか、数分後にはみんな眠りについていました。

深夜2時頃でしょうか。ふと目が覚めてしまいました。トイレに行きたくなったわけでもないし、喉が渇いたわけでもなかったのですが、何故か急に目が覚めたんです。

しばらく目を瞑って再び眠る努力をしていたのですが、全く眠れません。それどころかどんどん目が冴えてくる始末です。

隣では母と兄がぐっすり眠っているようでしたが、私はなかなか寝付けず困ってしまいました。

そうこうしているうちに尿意を覚えてきたので、父を起こして一緒にトイレに行くことにしました。父はもう1度眠るつもりだったらしく

「なんだよ～」

とかぶつくさ言っていましたが、快くついてきてくれました。

2人でテントを出て、外にある公衆便所に向かいました。その途中、湖のそばを通りかかった時、湖からザバンッという大きな音が聞こえてきました。

「うわぁ！何だ？」

驚いて思わず声が出てしまいました。すると父が

「おいおい、こんな時間に水遊びしてるやつがいるぞ」

と言って笑い出してしまいました。しかしすぐにまたザバンッと音を立てて水面が大きく揺れ動きました。

さっきよりも大きく波打つように感じたので、私も笑っている場合じゃないと思い、音のする方へ行ってみることにしたのです。

近くに行ってみると確かに誰かいるような気配を感じました。月明かりを頼りに見てみると……。

「あれ？いないぞ？」

「誰もいねえじゃねぇかよ」

「おかしいなあ。確かに誰かがいたと思ったんだけどなあ」

「気のせいだったんじゃねーの？」

そんなことを話しながら父とその場を離れようとした瞬間、何かに足を取られて思い切り転んでしまいました。

「痛ったぁ……。なんだこれ……砂？」

足元を見るとそこには大量の砂がありました。どうやら私はその砂の中に足を踏み入れてしまったみたいです。

慌てて立ち上がろうとしたのですが、なぜか上手く立ち上がることができませんでした。そしてようやく異変に気付きました。……体が動かない！？ 必死にもがきましたが、体はびくともしません。まるで金縛りにあったかのように指一本動かせなくなってしまったのです。