キャンプで見た化け物
投稿者:偽美 (28)
私はパニックになって叫び声を上げようとしましたが、口すらまともに動かすことが出来ませんでした。なんとかしようとジタバタ暴れていると父がやって来てくれました。父は私の体を見て
「お前大丈夫か?」
と聞いてきました。
もちろん私は返事をすることが出来ないので、ただひたすら首を縦に振ることしかできません。すると父が大声で叫び始めました。
「誰か!!助けてください!!」
「人が溺れています!!!」
「早く来てくださーい!!!」
父は必死に大声で助けを求めていました。しかしいくら叫んでみても、人が来る様子はありませんでした。
そのうちだんだん怖くなってきました。きっとこれは夢に違いない。悪い夢を見ているだけなのだと自分に言い聞かせながら必死に目を閉じました。
それでも一向に目は覚めることはありません。恐ろしさのあまり泣き出したくなりましたが、相変わらず涙一つ流せないままです。
その時でした。突然首元にひんやりとした感触を覚えたのです。驚いて目を開けると父の顔がすぐ近くにありました。
父は悲しそうな表情を浮かべて
「ごめんな……」
と言いました。その瞬間、自分の体に激痛が走りました。
「うぎゃああああ!!!」
全身の神経を針で刺されるような痛みに襲われ、思わず声にならない絶叫をあげてしまいました。それと同時に父の顔がみるみる変わっていきます。
やがてそれは人間のものではなくなっていきました。
顔が魚のような鱗に覆われ、鼻と耳は魚のヒレのような形に変わり、頭には角のようなものまで生えてきました。さらに腕からは鋭い爪が伸びていき、服を突き破って背中からも同じようなものが突き出していきます。
その姿はもはや人間とは言えません。
目の前にいるのは父ではなく、全く別の生き物でした。
私は必死に逃げ出そうとしましたが、やはり体は言うことを聞きません。その間にもその化け物はどんどん迫ってきました。そしてとうとうその手が私に触れました。……そこで私は気を失ったみたいで公衆便所の隣で父と共に眠っていました。父は全くその時の記憶がないらしいのですがあれは絶対に夢ではないと思います。
今でもあの時の恐怖が忘れられません。
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