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不思議体験

すだれさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

林の中の喰う男
長編 2022/06/22 18:58 4,692view

「そういえばさ、あなたは見えたり、そういう経験はないの?」

昔から、身近にはいわゆる「見える人」が多くいた。血筋が影響するらしく母と、兄はより鮮明に「見えていた」。小さい頃、母から「そういう存在」への対処法を口酸っぱく教わった。深入り厳禁、あれらとは絶対に理解し合えない、仲良くなんてもってのほか、できれば関わるな、超えてはならない線引きはしっかりしておくこと。
好奇心が強かった自分は、ギリギリの線引きしか守れなかったが。

こうして趣味で「見える」友人たちから体験談を募る中で、何度か聞かれた事はある。

「お母さんやお兄さんが見えるなら、あなたも見える可能性はあるでしょ?」
「なるほど、うーん、難しいな…何というか、心霊体験なのか区別がついていない節があるんだよな」
「区別がつかない」
「バイクでツーリングに出かけたとして、知らない土地の、陰湿な雰囲気の墓地の前を通る。
ふと一つの墓の後ろに、青白い顔の老婆が立っていて、ほんの一瞬だが「ああ、目が合った」と感じる。
その先の交差点で、「一体あのお婆さんは何故あんな所に立っていたのだろう」と考えながら走行していたらタイヤが水たまりでスリップして転倒…周囲に救助され救急車で搬送された」

「実体験なのね何してんのよ」
「しかしこれが心霊体験かはわからないだろう?ただの注意力散漫で、お婆さんは生者だったかもしれない…病院に駆けつけた母も何も教えてくれないしな」
「たとえ霊的な要因だったとしても、事故った子供に言わないでしょ」
「だからそういった意味では、心霊体験はしたことがない、となるな」

周囲にいる「見える」友人たちは、この説明を聞かされると「腑に落ちてない」と顔面で主張する。次いで変人呼ばわりされたり、「お前はいつかうっかり死ぬぞ」と物騒な予言をされるから、今回は「ああでも、」と続けてみる。

「感覚…というのか、空気の違いのようなものを感じた時はあったな」
「空気の違い?」
「家族で初詣に行った時に、」

神宮と名の付く所に行った。家からは遠かったが地元では有名だからと母や兄弟と参拝した。

「母も兄弟も特に違和感なく境内へと向かっていったようだったが、自分は麓に着いた頃から妙にそわそわしてしまって…。「なわばりに入ってしまった!」と焦る…が、近しいだろうか」

「獣みたいな言い分」
「そういった本能的なものだったのかな、「不躾があってはならない」という考えが占めて、鳥居を潜るまでに参拝の礼儀作法を調べて頭に叩き込んだよ」
「あなたにとって参拝は、神様のなわばりに入るって感覚だったの?」
「境内端のご神木を見て足が竦んでたね。お守りを買う間も挙動不審で兄弟には心配されたが、母は納得してたな」
「納得?」
「いわく自分は相性が悪いと」
「神宮の神様と相性悪いの?どれだけ業が深いの…」
「自分としては未踏の地と人込みに緊張していた説を提唱したかったがね」

自分の体験談などこんな程度だ、と締めれば、友人は「初詣といえば…」と話し始める。

「いつの年だったかな、私も家族と行ったのよ」

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