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不思議体験

NADEGATAさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

母の霊?
短編 2026/07/27 19:16 38view

小学校3年生くらいの頃でした。
当時の私は、小学校が終わると直接、近所の祖父母の家に行くのが通常でしたが、その日は、明日提出の宿題のドリルを取りに一度家のアパートまで帰ってきました。
玄関の鍵をあけ、ただいまも言わずに家に上がり、自室に続くダイニングへの扉を開けると、そこには1年前に亡くなったはずの母がいました。
カーテン越しに日が差し、まだ明るいダイニングの中ほどに、生前と変わらぬ笑みを浮かべた母が立っていて、「お帰り、Aちゃん」と私に声を掛けます。
怖さや嬉しさよりも、驚きで頭が真っ白になった私の口から、かろうじて出た言葉は「お母さん?なんで?」でした。
母は微笑みながら、「Aちゃんに会いたくて、少しだけ神様に生き返らせてもらったの」といいました。
これまで会えなかった寂しさと、母に会えた嬉しさが同時に胸にこみあげて、目に涙が溢れました。
泣きじゃくって言葉が出ない私に、母が「ごめんね、Aちゃん、寂しい思いをさせて」と声をかけます。
私は泣きながら、母が亡くなってからこれまでのことを話しました。
学年が上がって新しく仲良くなった友達や、怖い担任の先生、最近の父の得意料理など、母に聞いてほしい話はいくらでもありました。
話をしているうちに、いつの間にか私は泣き止んで、そこに母がいる幸せを感じていました。

しかし、話し始めて30分ほどで、それまでニコニコと私の話を聞いていた母が、寂しそうな顔をして「ごめんね、そろそろ行かないといけないの」と言います。
私は母と別れたくなくて、「どこに行くの?」と聞きました。
母は「とても寂しいところ」と答えました。そして、「でも、Aちゃんが一緒に来てくれたら寂しくないかも」と続けました。
私は母と離れたくなくて、そんなに寂しいところに行かないといけない母が可哀想で、「私も行く」と言いました。
母は微笑み、「ついてきて」と歩き出すと、ダイニングの扉を開けてすぐ左手、普段は壁があるはずの場所にもう一つ扉があり、それを開けて入っていきます。
私は母を追ってその扉に入ると、扉の先はまた別の廊下に通じていました。

私は先を歩く母を追って廊下を歩きだしましたが、その廊下の薄暗さ、長さ、先の見えなさに不安を感じ、母に「どんな所に行くの」と尋ねました。
母は振り返らずに、「とても寂しいところ、暗い、寒い、ごめんねAちゃん、寂しくないよ」と。様子の違う母に返事をできない私にかまわず、母は話し続けます。
その様子に不安が増し、私は廊下を振り返りました。
廊下には電灯もなく、家の中とは思えないほど長い廊下の入り口から差し込む明りが、頼りないほど遠くに見えました。
もう一度母を振り返ると、1歩先に、私の太ももほどの高さから私を見上げる母の顔が浮いていました。

ついてこない私のことを不思議がるような表情で、「Aちゃん、一緒に来て、ごめんね、寂しい、ごめんね、Aちゃん」と文章にならない言葉を抑揚なくつづけます。
その顔の後ろに、闇に溶け込んでうっすらと母の両手と胴体が見え、四つん這いになっているらしいとかろうじてわかります。
そしてその先は完全な闇で、ゴーーー、ゴーーーと風が鳴るような音が聞こえます。
床についた右手を私に向かって指し伸ばそうとする母に対して、私がとった行動は背を向けて入り口に向かって逃げ出すことでした。
暗い廊下を、入り口から差し込む明かりに向けて走り抜けました。入口に差し掛かった時に一度だけ振り向くと、顔だけ横向きにポツンと床に転がった母が寂しそうに私を見つめていました。

扉を抜けると、そこは元の家の中で、廊下へと通じる扉は消えていました。

その後祖母の家に行き、さっき起きたことを話しました。
家に母がいたこと、一緒に行こうと言われたこと、暗い廊下のこと。
祖母は黙ってそれを聞いていましたが、聞き終えると「それはAちゃんのお母さんじゃないよ」と言いました。
「Aちゃんのお母さんは、天国でAちゃんを見守ってるから。ただ、お化けは大事な人に化けて出てくることがあるから気を付けないといけないよ」と言いました。
そしてこれ以降は、一人で家には帰らずに、必ず祖母の家に来るように言い含めました。
今思うと、祖母は私の話を真に受けたのではなく、母を失った私の精神状態を心配していたのでしょう。

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