「は?」
よく分からない母の言葉を聞いた俺は、寝起きの頭をフル稼働させる。
「あ…」
そして、すぐに昨夜の奇妙な出来事を思い出し、俺は寒気を覚えた。
確か祖父の寝台から何かが這いずって来て俺を掴むと、俺はそれを祖父だと思い込んであやしていた筈だ。
そこまで思い出せば今こうして目を覚ます直前までの事も走馬灯の如く蘇った。
そう、俺が祖父だと思い込んでいた人影は祖父ではない別人で、もう一人寝台に居てずっと手招きしていた方が本当の祖父だったんだ。
だとしたら、俺が親身になってあやしていたのは何処の誰だったのか。
必死に思い出そうとするが、どうにも最後に見た顔だけは浮かび上がって来なかった。
そんな折、沈んだ面持ちで俺の事を見ていた担当者と目が合うと、担当者は気まずそうに目を逸らして見せた。
いまいち頭が寝惚けているせいで思考が鈍っている。
俺は一先ず洗顔に起きて朝食を食べると、そのまま葬儀の話し合いを一人離れて寝室からテレビを見ながら聞き入っていた。
そして、最終的な打ち合わせが終わると、本日は朝早くから防腐処理を行うため、祖父は葬儀社を旅立ち、俺たち遺族は出立を見送る。
余談だが、エンバーミングが終わる夕方まで、俺は実家で仮眠を取ることにしたものの、どうにも寝付きが悪い。
それもこれも昨夜の恐怖体験が尾を引いてるのだろう。
何となくなのだが、両親には切り出せていない。
それに、担当者は俺の両親に「魘されていた」とだけ報告しているようだし、俺も深く追及することはしなかった。
と言うのも、その時は記憶の混濁と気持ちの整理が付かないと言う事もあり、担当者に昨夜の事を聞く勇気も出なかったんだ。
そして、省略するが、無事エンバーミングされた祖父は葬儀社に帰還し、その日の宿泊は両親がしてくれた。
翌朝変わった事はなかったかと訊ねて見たが、何にもなくホテル感覚で寛いでいたと聞いた。
当日、葬儀は親類だけで執り行うこととなり、中規模の会場で粛々と祖父との最期の別れを済ますと、その流れて火葬場へ親族共々移動し火葬が行われた。
ついさっきまで肉体があった祖父は僅か壺に入りきるだけの骨となってしまった事に不思議な感覚に陥る。
人間死んだらこの何グラムとも分からない壺に変わってしまう。
人の世の無常さを知り、俺はまた涙腺が綻びそうになった。
葬儀社に戻り、葬儀の全ての日程が消化されると、その場で最後に参列者への御返しの品が配布され、親族がちらほらと帰宅を始める。
長いようであっという間だった三日間が終了すると、俺達一家は祖父の遺影と遺骨を受け取り帰宅の準備を進めた。
両親がトイレに立ちその場を離れた、そんな折。
俺はふと担当者と二人きりになったことで、一昨日の事について切り出してみた。
「あの、一昨日のことなんですけど、俺あんまり覚えてなくて……。俺、電話してましたよね?○○さんと」
あの出来事が夢か現実か、少し自信の無かった俺は俯き加減に訊ねてみると、担当者は顔を強張らせて重たい口を開いた。

























おじいちゃんの未練かと思いきや…
面白かったです
おじいちゃんは亡くなっても優しかったね
「おう、○○。元気してたか」
「ああ、それなりに。それより爺ちゃんは?」
この会話絶対間違えてるやろ。母親と子供の会話じゃない。
作者、父親との会話と勘違いしてたっしょ。
最初に会ったのは母だけど会話部は次に葬儀場で会った安心した表情の父としたものと考えてもおかしくは無いと思う。それより通常の葬儀(火葬まで4日程度)で防腐処置までするというのは聞いたことがないので驚いた。地域性?なのかな。