それと同時に寝台の方の人影の事も思いだし、俺は何気なしに視線を向ける。
すると、タイミングよく走行中の車のライトの灯りが室内に差し込んで、その人影の素顔を照らしたのだ。
「え……、爺ちゃん?」
そう、寝台に座るように俺に手招きをしていたのは、亡くなった筈の祖父だった。
一瞬だったが、祖父が緊迫した面持ちで俺に凄んでいて、必死に手招きをしているように感じた。
いや、待て待て待て。
寝台に居るのが祖父なら俺が今あやしているのは祖父ではないのか?
急に気温が1℃2℃と下がっていく錯覚に陥ると、共鳴するように鼓動が弾む。
凄い勢いでアドレナリンが分泌されていくのが自覚できる。
電話越しでは「○○様?○○様?何かありましたか?」と執拗に担当者の声が聞こえてくる。
俺は、知らず知らずに強張った手で抱きついている何者かの腕を振りほどこうと掴むが、尋常ではない力でびくともしなかった。
そして、俺は意を決して口にする。
「……おまえ、誰だよ」
ぎゅっと口を結んで息を呑むと、俺に抱きついて埋めていた頭が少しづつ離れていく。
つまり、離れていくと同時に表情が徐々に露になっていく事を示す。
知らない頭髪。
知らない肌艶。
知らない眉根。
知らない双眸。
知らない鼻筋。
そして、知らない口許を歪ませたソレは声を発する。
『死にたくないよおおおおおおおお』
ソレが抱きついてきた瞬間、俺は反射的に、
「うわああああああああああ!?」
と心臓が飛び出るんじゃないかって程叫んだ。
投げ捨てた子機から『○○様!?○○様聞こえますか!?』と微かに担当者の焦った声が聞こえた気がするが、俺の視界は一瞬の内に暗闇に包まれてすぐに気を失ったようだ。
次に俺が目を開ければ、そこは明るい陽光に照らされた寝室で、リビングで話し合っている両親と担当者の声が聞こえてきた。
随分と酷い悪夢に魘されたように最悪な気分のまま起き上がると妙な肩凝りというか、重みを肩に感じて数回肩を回して凝りを解す。
俺が起き上がるのが見えたのか、すぐに母が気づくと父も「起きたか」と何やら安堵したようにため息を吐いた。
「アンタ、夜中に寝惚けてたんだって?魘されてたって聞いたわよ」


























おじいちゃんの未練かと思いきや…
面白かったです
おじいちゃんは亡くなっても優しかったね
「おう、○○。元気してたか」
「ああ、それなりに。それより爺ちゃんは?」
この会話絶対間違えてるやろ。母親と子供の会話じゃない。
作者、父親との会話と勘違いしてたっしょ。
最初に会ったのは母だけど会話部は次に葬儀場で会った安心した表情の父としたものと考えてもおかしくは無いと思う。それより通常の葬儀(火葬まで4日程度)で防腐処置までするというのは聞いたことがないので驚いた。地域性?なのかな。