謝罪男
投稿者:with (43)
しかし、通常の倍の時間をかけて自宅の近くまで戻ってきた所で、俺は愕然とする。
俺のアパートの入口付近にあの男性が佇んでいるではないか。
どうしてあの男性が俺の家を知っているのか分からないが、先程の土下座を目の当たりにした手前、俺はよからぬ事を想像して立ち竦む。
すると、俺の視線に気づいたのか、男性は俺と目が合うなり、まるで飼い犬のように駆け寄ってきては、それはもう見事なスライディング土下座を決めた。
そして、流れるような動作の後、伝家の宝刀「すみません!」という謝罪の連呼が始めたのだ。
「すみません!すみません!すみません!」
「ちょっとマジで何なんすか?新手の嫌がらせ?勘弁してよ」
俺は男性の真意が掴めず少し強めの口調で問い質す。
それが相手を逆撫でしてしまったのか、はたまた闘魂魂に火を点けたのか、男性は更に早口で謝罪の言葉を捲し立て、額を地面に擦り付けるのだった。
この異常事態に気づいた周囲の通行人が足を止め始めると、片方が見下ろし片方が土下座をして謝罪するといった構成上俺に視線が集中する事となり、これはまずいと焦った俺は男性に苛立ちをぶつけてしまった。
「本当に止めてください!もうわかったから!俺が悪かったですって!やめて!」
対抗心もあり全力で俺も謝ると、誠意が伝わったのか男性の謝罪が止まった。
やった、謝罪に打ち勝った、と内心ガッツポーズする俺。
しかし、ピタリと止まり静まった空気の中、男性は手をついてゆっくりと上体を起こす。
俺は土下座する男性が頭を上げる仕草を、不思議と息を呑むような緊張感を持って見守っている。
頭を上げると、男性の痩せ細った顔が俺と目が合うものの、その目付きはまるで人を呪い殺しそうな殺伐とした雰囲気を醸し出しており、眉下に彫りが浮くほど眉根を寄せて吊り上げていた。
そして、これまで発せられていたやや甲高い謝罪の声と一変したドスのきいた野太い低い声色で、
「謝ってんだろが、ダボ」
と、周囲に聞こえないよう俺の耳元で呟くのだ。
男性の変わりように脳内処理が追い付かず暫く放心していると、男性は再び高い声色で「すみません!」と繰り返しながら、まるでチンピラから逃げ去るいじめられっ子宛ら走り去っていった。
野次馬の視線が交錯する中心に残された俺は、数秒の後にすぐに我に還るが、そのままアパートに入るのはバツが悪く、一先ずもう一回り近所を迂回することにした。
因みに、その後は無事に自宅に帰れたし、それ以来あの男性とは出くわしてはいない。
あの男性が何の目的であんなことをしたのか分からないが、目的が分からないからこそ恐ろしいと思う事もある。
こうして、ツイていた筈の俺の一日は最悪の締めくくりを迎えたのだ。
ダボってh県南西部の方言なんだそうな。
眠れません!!(怖くて)
目的わからなすぎて怖い
怖かったです(笑)
こわ
怖いし面白いです
「ダボッ」って…
ジョジョ第4部の億泰かと思った…(汗)
恐すぎる…
なにかわからない、それが怖い
主人公の名前がダボだったんだろ