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心霊

津々さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

事故車の怪異
長編 2022/04/14 11:43 5,870view
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これは数年前に私の身に起きた出来事です。

私は当時、積載車の運転手をしていました。積載車とはトラックの荷台に事故車や新車などの車を乗せて目的地まで運ぶトラックの事です。

あの日は、最後の荷下ろしが終わり帰宅途中でした。そこに、社長から電話が来ました。

「○○君、突然で悪いが△△さんの紹介で新規のお店に運搬を頼まれたんだが、○○君が現場に一番近くて行ってもらえないか?」という内容でした。

私は、もう帰って休みたかったのですが、社長の頼みごとなので「了解しました。住所と詳しい内容はメールで送ってください」と伝えると、社長は「残業代も多めに出すから、気をつけて作業してくれよ」といってくれた。

この会社は、こぢんまりとした小規模な会社でしたが、社長の人柄がよくて働きやすい職場でした。

社長から送られてきた住所は、現在地から1時間ほどの場所でした。
私は「もうひと踏ん張り、がんばりますか!」と自分に鞭を打って現場まで向かいました。

現場に着くと、こういうのもなんですが、結構ボロボロな車屋で置いてある車はほとんど廃車ばかりでした。
すると車屋の従業員が「急に申し訳ありません。この車の配送をお願いします」と店から出てきました。

従業員が指を差した車はなんと有名な外国車でフロント部分が大きく大破した車でした。

私は従業員に「あらぁーせっかくの高級車なのに派手に事故ったんですねー」と話すと従業員は

「もったいないですよね。運転手も死んじゃってウチで引き取ったんですよ。でも、希少な型だから直して乗りたいってお客さんが来て助かりましたよ」

と笑顔で答えました。

私は、「死んだなんて、そんな冗談止めてくださいよー」と従業員に話すと、従業員は「いやいや本当ですよ」と…

私は内心、(嫌なこという奴だな)と思いましたが、△△さんの紹介だから常連客になってもらうために笑顔と愛敬を振りまきながら、車を積載車に積む準備をしました。

普段なら、どれだけフロントが破損していてもけん引のウィンチで引き上げるのですが、なぜか車は上がって来ません。
再度、いろいろ確認してもおかしなところはありませんでした。
なので、いつもはしませんが、車を奥の手(力技)で強引に荷台に乗せました。

すると、車が置いてあったアスファルトには赤黒い錆びがびっしりと張り付いていて、車の原下を覗くと同じものが下に垂れ下がっていました。

その光景を見た従業員は私に「血錆が張り付いてて動かなかったんですかね」と話してきました。

私は少しムッとしながら、「またのご利用お待ちしております」と、その時に出来る精一杯の笑顔を従業員に向けトラックに乗り込みました。

車屋から走り出して間もなく、荷台の車から変な音が聞こえてきました。
最初は、あの錆が剥がれ落ちる音かなとも思いましたが、その音はなんだか人の唸り声の様にも聞こえ気味が悪かったのを覚えています。

その後も、異音は続きトラックの車内は重苦しい雰囲気になっていきました。
また、時折聞こえるいつもとは違う音、「ガチャ…ガチャガチャ」と、まるでドアを開けようとする音も聞こえて来てとても恐怖を感じていました。

なんとか、目的地の修理工場に到着すると修理工場の従業員が出てきました。従業員は「お疲れ様です」と荷下ろし先に誘導してくれました。

私は(さっさと降ろして帰ろう)と荷下ろしの準備を始めました。
ですが、トラックの車内に軍手を忘れ取りに戻ると一瞬でしたが、血だらけの男の人がトラックの助手席に座っているように見えました。

私は、「うわっ!」とびっくりしてトラックから転び落ちてしまい、従業員に「どうしました?大丈夫ですか?」と心配されました。

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