事故車の怪異
投稿者:津々 (42)
しかし、私は「助手席に幽霊が居た!」という、どうせ信じてもらえない話をする事が出来ずに、「何でもありません。足を滑らせただけです」と従業員に答えました。
私は、軍手を履かずに従業員数人と普段より苦労しながら車を荷下ろししました。
手伝ってくれた従業員も「腹下の錆、すごくない?」と話をしていたのが聞こえてきました。
私は、(修理にいくらぐらいかかるんだろ)と思いながら従業員の話を聞いていました。
私は、さっきの見たモノの恐怖心からか早く帰宅したかったので、従業員の話もそこそこにトラックに配送伝票を取りに戻りました。
少しドキドキしながらドアを開けると、そこには何もいませんでした。
なので(さっきのモノは俺の見間違いだったんだな)と、思う事にしました。
車の受け渡しも終わり、配送伝票も受け取り帰ろうとした時でした。
トラックのドアを開け乗り込もうとすると、そこに先ほど見た血だらけの男性がさっきより鮮明に見えました。
私は「ギャー」と、またしてもトラックから転げ落ちました。
すると、一度目より多く従業員が集まり「またどうしたの?疲れすぎなんじゃないの?」と話しかけてきました。
しかし、私は「幽霊が出た」といってしまいました。
言った後に、(誰も信じてくれずにバカにされるんだろうな)と思いましたが、従業員の何人かは「見えることたまにあるから気にするな」と予想外の反応でした。
その後、私は恐怖心と闘いながら社長の待つ会社に急ぎました。
早く帰りたい一心で自腹を切って高速道路に乗るほどです。
あともう少しで高速道路の出口という所で、今まで体験した事のない怪異に襲われました。
それは、荷台には何も乗ってないはずなのに「ガチャガチャ」と車のドアを開けようとする音がまた聞こえて来たのです。その音が気になり、何度か後ろを向いたりしていると突然。
助手席に血だらけの男が現れたのです。
しかも、その男と目が合ってしまい金縛りのような状態になってしまいました。
その直後に、激しい衝突音とまぶしい光が見え意識を失いました。
次に目を覚ますと、病院のベッドの上でした。私の傍らには社長が心配そうな顔で私に話しかけてきます。
「意識が戻ってよかった。心配かけさせやがって」と社長は泣いていました。
私は「どうなったんです?」と社長に聞くと少しずつ話してくれた。
簡単に説明すると、私がスピードの出し過ぎで高速道路の出口付近にある壁に衝突したとの事でした。
私は、あの時見たモノを社長に話すか迷いましたが、社長を信じて全部話しました。
すると社長は、「お祓いをしよう」といってくれました。
私の退院後、すぐに大掛かりなお祓いをしました。会社のトラック全台と従業員全員です。
そこまでしてくれる社長に私は理由を聞きました。すると社長はこう話してくれました。
「昔から事故車を運搬していると不思議な物を見る事が多いだ…」そういうと社長は黙ってしまいました。
きっと、事故で突然死んでしまった人たちは、死んだことに気付かず自分の家に帰りたくて、トラックに乗り込んだのかなと今では思います。
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