不思議の国のアリス症候群
投稿者:アマリリス (3)
しかし、このままでは困る。
もし村人が再びここへやってきたら逃げ道がないのだ。
四方は絶壁のように聳える樹木と急な斜面。
出入口はトンネルしかない。
例えるなら文字通り奈落の底に私達はいるわけだ。
『ーーーーーーー!ーー!』
不意にトンネルの向こうから声が聞こえた。
私達は互いに顔を見合わせるわけでもなく、一様に警戒心を高め、空洞を背に背水の陣を敷く。
すると、ヒュンと何やら風切り音が聞こえたと思えば、私の横っ腹に熱傷のような痛みが走る。
「あづっ……!」
私は足をふらつかせながらも何とか踏ん張りをきかせ、腹部を見やる。
矢じりが見える。
矢で射貫れたのだ。
急な激痛と倦怠感が襲い、脈拍が早くなると、脂汗が吹き出る。
自分の動悸が恐ろしくハッキリと聞こえる。
更に風切り音が鳴り、A子の悲鳴と、スコン!と的を撃ち抜く音が聞こえ、更に私の足に痛みが走る。
微かな意識の中で、私達は今、村人たちに弓を向けられているのを自覚し、後ろへと倒れこむ。
ああ、こんなところで死ぬのか、なんて人生の終着点を悔やみつつも、不思議といつまでたっても背が地面へ着かない浮遊感に首を傾げたくなるが、そこで意識は途絶えた。
次に目を覚ますと、そこはレールとカーテンが四方を囲む白い天井だった。
見切れた位置にある蛍光灯の眩さに目をそらし、私は、私を包む柔らかい感触に安堵する。
私はベッドに寝そべり布団の中にいたのだ。
何やら機械的な音に視線を向ければベッドサイドにモニタがあり、私の指にはパルスオキシメータが装着されていて、他にも管が繋がっている。
そういえば記憶の最後では矢で貫かれたのだったと思い至る。
しかし、見るからに病室にいるということは私は助かったのだ。
A子達はどうなったのだろう。
CとDがここまで運んでくれたのだろうか。
目が覚めると一度にいろんな事を考えてしまい、脳がパンクしそうだったが、私は安堵のあまり再び深い眠りに落ちた。
数ヶ月後、私は退院して日常生活に戻ることができた。
ただ、これまでと違う点があることに私は最初の何週間かは発狂しかけた。
一つは、A子とCとDが帰っていないのだ。
ファンタジー読んでるみたいで面白かったです
読み応えがありましたが、本当に不思議な話ですね。
なんか・・・・
こわ・・