呪いを解き放ったかもしれない
投稿者:煙巻 (8)
結局その日の晩は祖父母は知人の家へ追悼に行き、そこでは枕経が行われたと聞いた。
翌日も通夜に行く祖父母を見送り、俺達家族は留守を任されたが、特にすることもないので日がな一日宿題とゲーム、父の相手と母が作る晩飯の手伝いをさせられた。
空が沈んで少ししたら祖父母が帰宅し、塩を振りかけて敷居を跨ぐ。
その時、祖父は俺の顔を見て何か言いたげにもごもごと口を動かしていたが、無理矢理言葉を飲み込んだように大きなため息をつく。
少し遅い夕食を済ませ、俺は祖父に誘われて一緒に風呂に入る事になった。
重たい腰を持ち上げる祖父の表情には陰りがあり、酷く失意の底にいるような面持ちだったが、それを見た俺も何故だが先日の地下牢について考えてしまった。
入浴前にはしっかり体を洗う事を習慣にしているのは祖父の教えからだ。
垢を落として湯船に浸かると体の芯から温まるこの感覚がたまらなく気持ちいい。
ただ、目の前の祖父はじっと俺の顔を見て、皺で垂れ下がった目尻の奥に光る眼を向けている。
「じいちゃん、どうした?」
「……おまえ、離れ行ったかい?」
祖父の的確な投げかけが見事に俺を打ち抜く。
明らかな動揺を相槌と受け取ったのか、祖父は「そうか」と声を漏らす。
「……あそこには二度と立ち入ったらいかんからな」
神妙な面持ちの祖父の表情を目の前にして、俺は背筋をただして頷く事しかできなかったが、きっと祖父は俺が離れに行って何かを目撃してしまったことを悟っていたのだと理解していた。
その体験から俺が高校生になるまで一気に時間が飛ぶ。
祖父は肺炎にかかり亡くなったとの訃報が実家に入り、俺は学校を休んで祖父が眠る母方の実家へ急いで赴いた。
教育に関して一張一弛であり、豪快な性格から俺も祖父の事は好いていたが、亡くなるとぽっかりと穴が空いたように何も考えられなくなるものだと知った。
そして、この地へ足を踏み入ると嫌でも昔体験した離れの地下牢のような場所を思い出す。
祖母から祖父が遺した俺宛の手紙を預かっていると言われ、俺は慎ましく受け取った。
和柄の和紙にザラりとした質感をなぞり、俺は一人縁側に出てその中身を読む。
「……え」
そこには例の離れの地下について書かれていた。
その昔、戦後しばらくしてこの地に住まう村人は徐々に豊かに健やかに生活を築いていき、集落から脱却するほどの人口となり、移住民が増えてきたそうだ。
そうすると悪い奴も自然と入り込んでくるもので、悪者と関係をもった地主の子孫が、ある日、地下に座敷牢を作り罪人を監禁し拷問を行っていたという。
問題は、その罪人が無実の村人であったこと。
地主の子孫は私利私欲と腹癒せのために人を攫っては座敷牢に監禁し死ぬまで痛め続けて悦に浸っていた。
だが、そんな悪事も束の間、その子孫は目を抉り取られ喉を引き裂き手足の指を折られた状態で亡くなっているのが見つかり、村は権力者の殺人事件に肝を冷やしたという。
その後も子孫の倅による無体な言いがかりで冤罪を吹っかけられた村人が座敷牢に連れていかれ拷問を受け亡くなる。
あの座敷牢へ連れていかれた者は例外なく生きて出てこれないと囁かれ、村内では禁忌とされた。
面白かった
もっと評価されてもいいと思う
面白かったし怖かったしオチも最高だったけど、なかなか読みにくい文章だった。
それすらもそれも不気味さを演出していたけど
構成も文章もしっかりしているし、話自体も、時系列にそって流れているため分かりやすく読みやすかったです。結局、呪いは解き放たれたのか、祖父の代をもって終了したのかわからぬまま結んでいる点で、逆に不気味さと呪いの連鎖への不安や怖れを暗示しているように感じましたが。
うむむむむむむむ…
時代背景がよく分からんかった(´・ω・`)
戦後って第二次世界大戦?戊辰戦争とかなら時代背景想像出来るんだけど