呪いを解き放ったかもしれない
投稿者:煙巻 (8)
そして、子孫の倅もまたしばらくした後に先代同様に目を無くし喉を引っ掻き指を折った状態で死亡してしまうのだった。
それからというもの地主の末裔達はある年台に差し掛かると上述の形で死亡してしまう事に違和感と危機感を覚え、改めてこれは座敷牢で残忍な行いをされ亡くなった奴らの呪いだと自覚し、曰くの多い座敷牢に目を付けた一人が封鎖を施し、過去座敷牢で起きた事柄を公式に禁忌として扱ったという。
座敷牢を作った祖先から続く呪いの原初を封鎖したことで先代達のような惨たらしい死に際を迎えずに済んだわけだが、いつしか座敷牢を埋めた土地に家が建ち、その家主が俺の曾祖父だったそうだ。
曾祖父は更に昔に生まれた祖父から伝言のように又聞きした、恋人の敵討ちをしたいという話を常々語っていたという。
その恋人は地主の先祖の一人に奪われ、座敷牢に連れていかれたのち拷問を受け惨たらしく亡くなったそうだ。
曾祖父から見た祖父の代の話をどうして真に受けたのか知らないが、感化された曾祖父は座敷牢跡地に家を建て、人知れず穴を掘り、座敷牢へ繋がる道を何年もかけて発掘した。
曾祖父の執念は称えるが、俺には顔も知らない人の為に復讐しようなんて気持ちがどうしてもわからなかったが、今思えば曾祖父も何か呪いの影響を受けて正常じゃなかったのではとも思う。
曾祖父が復讐を遂げたのかはわからないが、その後、隣地に大きな家を建て母屋として扱い、座敷牢が眠る家屋を離れとして、半ば倉庫のようにして利用してきたと手紙に書かれている。
その土地を俺の祖父が受け継いでいる。
手紙の最後には、地下の座敷牢で見た事は忘れるよう書かれていた。
祖父は俺が数十年ぶりに地上への扉を開いた事で呪いを解いたのではと勘繰っていたようで、事実当日に俺は奇妙な体験をし、その後地主の当代は亡くなったのだ。
こんな偶然が重なることは果たしてどのくらいあるだろうか。
この手紙を読んでからというもの、俺は罪の意識に苛まれた。
あの日、俺が好奇心から地下への入口を開けたせいで。
あの日、俺が座敷牢まで赴いたせいで。
俺が当代の地主を死なせてしまったのだ。
俺は手紙をポケットにしまい、縁側から庭先に見える離れに目を向ける。
今となっては、そこにあのボロい倉庫のような家屋はない。
生前、祖父が亡くなるほんの半年前に離れの家屋は解体され更地に戻したと祖母から聞いた。
それはまるで自分の死期を悟り後顧の憂いなく呪いの根元を断とうとした祖父の最後の姿が目に浮かぶようだった。
祖父の葬儀後、その流れで納骨を済ませ、墓石に向け手を合わせる親族一同。
その一団の隅の方で俺は拝みながら祖父へあることを念じていた。
当代の地主の死因にその呪いが関わっているとして、この呪いの騒動に決着がついたのか?
当代が死んだら次の標的にされるのは当代の子供達なのでは?
そもそも祖父の肺炎はこのことと関りがないのか?
俺は様々な葛藤を墓の中に眠るであろう祖父へ伝え、墓石の背後へ目をやる。
随分と解れた貫頭衣を纏った華奢な人影が俺の事を睥睨し、ただ「ありがとう」と感謝を述べている。
他の親族には見えていないのだろう。
何度も俺に向け感謝を口にするそいつは、どう見ても恨みつらみを含んだ狂気の面に見えるが、目玉がくり抜かれているのか空洞だったので表情から本心は読み取れない。
きっと俺があの時座敷牢で見た正体がそこに立つアレなのだろう。
面白かった
もっと評価されてもいいと思う
面白かったし怖かったしオチも最高だったけど、なかなか読みにくい文章だった。
それすらもそれも不気味さを演出していたけど
構成も文章もしっかりしているし、話自体も、時系列にそって流れているため分かりやすく読みやすかったです。結局、呪いは解き放たれたのか、祖父の代をもって終了したのかわからぬまま結んでいる点で、逆に不気味さと呪いの連鎖への不安や怖れを暗示しているように感じましたが。
うむむむむむむむ…
時代背景がよく分からんかった(´・ω・`)
戦後って第二次世界大戦?戊辰戦争とかなら時代背景想像出来るんだけど