呪われたカフェ
投稿者:セイスケくん (15)
これは、大学時代の友人から聞いた話である。
友人がとあるカフェで遅めの朝食をとっていた際、外から激しい足音が響き渡った。視線を入り口に向けると、一人の女性が立っていた。
顔色は青白く、髪は乱れ、目は異常なほど見開かれており、その光には狂気の色が宿っていた。カフェにいた全員が、その異様な姿に息を呑んだ。
女性は唇を震わせながら、店内の客を一人ひとり見渡し、まるで何かに追い詰められているように、突然叫び声を上げた。その表情には恐怖と絶望が入り混じり、何か重大な裏事情を抱えていることが明らかだった。
「この店は…ここはみんなを不幸にする場所なんだ!」
友人も他の客たちも呆然とし、ただその場に立ち尽くすことしかできなかった。女性の目は鋭く、狂気が滲んでいたが、誰も彼女に手を出そうとはしなかった。
実は、このカフェは地元では人気のある小さな店であったが、その裏側には不穏な噂が絶えなかった。具体的には、カフェは地元の弱者を標的にし、高額な利息を伴う高利貸し行為を行っているというものだ。
表向きは「地元に根差したコミュニティカフェ」として知られていたが、実際には困窮している人々に接近し、裏で彼らを搾取しているという話だった。
「地元に根差したコミュニティカフェ」として知られているが、弱者を狙った高利貸し行為を行っているという噂が広まっていた。
困窮している人々に近づき、親しげに援助を申し出るものの、裏で高額な利息を取って彼らを搾取するというのだ。その女性も、この店の犠牲者の一人だったのかもしれない。
彼女は腕を激しく振り回しながら、「この店のせいで…!」と叫び続けた。その姿はまるで見えない何かに取り憑かれているかのようであり、カフェ全体に恐怖が広がった。
店員たちは困惑し、どう対処するべきか迷っている様子がありありと見て取れた。その時、奥から青ざめた顔の店長が姿を現した。店長は何かを言おうと口を開きかけたが、声が出ず、顎を震わせるばかりだった。
誰も動けずにいる中、ついにカフェの奥から一人の客が立ち上がった。友人の隣に座っていた中年の男性であった。彼は穏やかに店員に合図し、女性のそばに静かに歩み寄った。
「少し、話を聞かせてもらえませんか?」
男性は静かな口調で女性に語りかけた。しかし、女性の瞳には異様な鋭さが宿り、男を睨みつけた。友人は、その視線の異常さに背筋が凍る思いがした。そして次の瞬間、彼女は不気味な笑みを浮かべ、こう呟いた。
「ふふ…お前には、見えるのか?」
その言葉に、友人の胸には不安と恐怖が一気に押し寄せた。まるでこの世のものではない何かを見ているかのような彼女の表情。その声には奇妙な重みがあり、カフェ全体が冷たい寒気に包まれた。友人もその瞬間、背筋がぞっとしたという。
男性は、女性に対して静かに優しい言葉をかけ続けた。彼の声は落ち着きがあり、どこか安心感を与えるものであった。次第に女性の肩の力が抜け、震えも収まっていった。
その後、男性は女性をテーブルに座らせ、向かいに腰を下ろした。二人の間で静かな会話が始まると、女性の怒声は徐々に収まり、店内の空気も次第に落ち着きを取り戻していった。しかし、会話が続くにつれ、再び女性の表情が変わり始めた。顔はますます青ざめ、目は虚ろになっていった。
「お前も…お前も同じ目に遭うんだよ…」
突然、女性は低い声でそう呟いた。男性も言葉を失い、次の瞬間、彼女は目をぎらりと光らせて叫んだ。
「この店には呪いがある…お前も、皆も、逃れられない。私はずっと見てきたんだ!」
女性の叫び声が響き渡るにつれ、店内の空気は次第に耐え難いものとなり、客たちは次々に席を立ち始めた。友人もその場を後にしようとした時、ふと男性がこちらを見た。
その表情は、一瞬ではあったが、何かに取り憑かれたような放心した顔で、強く印象に残ったという。
数日後、友人は再びそのカフェを訪れた。店内はいつもの静けさを取り戻していたが、どこか説明のつかない違和感が漂っていた。そして、あの男性の姿はどこにも見当たらなかった。代わりに、店の奥の壁には彼の顔写真が飾られていた。
店員が何かを思い出したかのように呟いた。
「あの方、実は常連さんでね…最近はあまり来なかったけれど、数日前に久しぶりに来たんだ。誰かに話を聞いてほしい、と言ってたよ」
友人はその言葉に何か引っかかるものを感じたが、結局何も言わずに店を後にした。
カフェを出て少し歩いたところで、突然後ろから肩を叩かれた。驚いて振り返ると、そこには青ざめた顔の男性が立っていた。
「助けてくれ…逃げられないんだ…」
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