ある施設での「洗礼」
投稿者:せせり (5)
ある県立の研修施設で臨時職員として働いていた時のことです。
アルバイト扱いでしたが、週に1、2度、夜勤がありました。
とはいえ、電話番と緊急時の対応、夜の見回りをするくらいで、基本的に楽な仕事でした。
6月のある日、私は夜勤となりました。
研修生も少なく、霧雨が降ったせいで気温が下がり、少し肌寒く、とても静かな夜でした。
22時の見回りも終え、交代で風呂に入り、後は寝るだけとなった時に、突然、内線が鳴り響きました。
研修生からかと思い、受話器を取りましたが、相手は何も話しません。
私は相手に呼び掛けましたが、空気が流れる音が聞こえるだけで、一向に話してきません。
いたずらかと思い、内線がかかってきた場所を確認すると、3階の大ホールからです。
研修生の宿泊している所からはかなり離れており、少し変だなとは思いましたが、確認のため大ホールへと向かいました。
階段を上り、3階のホールに向かう廊下に差し掛かった時、私は子どもが笑いながら走り去る音を聞きました。
そこで初めて私は恐怖を感じました。
その日泊まっていた研修生は、全員大人で、子どもはいませんでした。
それでも状況を確認するために、大ホールに入ってみましたが、誰もいません。
ホッとした私は事務所に戻り、一緒に夜勤をしていた職員に報告すると、少し微妙な顔をしましたが、特に何も言われませんでした。
翌日、別の職員の人にその話をすると、その施設が建っている場所は、かつては古戦場だったらしく、有名な心霊スポットということでした。
そういった話はよくある話らしく、職員の間では「洗礼」と呼ばれていたそうです。
その後、私は何度か同じような体験をしました。
夜だけではなく日中にも起こり、一度でしたが、姿を見たこともあります。
翌年、契約延長の話をもらいましたが、丁重にお断りしました。
意外とこういうことって多いのでしょうかね。。。