母親から突然電話が来た理由

今から5年ほど前のことです。

私は実家を出て一人暮らしをしており、ほとんど実家に帰っていませんでした。

ある日、母親から電話があり至急帰ってくるように言われました。
誰か病気になったのかも思い、訊いてみましたが、母親は否定します。
とにかく帰ってくるように言うばかりで、変だなと思いながらも、急いで帰りました。
母は滅多に連絡してるくることもなく、理不尽な物言いをするタイプではありませんでした。

帰ってきた私に母は仏壇に線香をあげるように言っただけで、私は言われるがまま、線香をあげました。
母はホッとしたように、

「もう大丈夫だから」
とだけ言いました。

それからしばらくして、私は仕事に忙殺されるようになりました。
毎日、朝から日付が変わる頃まで働き、ろくに休みも取れないような状態でした。

体力的にも限界が近づきつつありましたが、ようやく仕事の目処が立った日、私は日付が変わったくらいに職場を出ました。

いつものように車を運転して帰りましたが、いつになく眠気が強く、何度も瞼が閉じそうになりました。

家まであと少しというところで、ついに私は意識を失いました。

どのくらい経ったか、突然、大音量の音楽が車内に鳴り響きました。

ハッと目を覚ました私は、咄嗟にハンドルを切り、カーブを曲がりました。
そこは直線が終わり、90度に曲がるカーブで、目の前はコンクリートの壁でした。

直線の途中で寝落ちした私は数十メートル居眠り運転をし、もう少しで壁に激突するところでした。
いつもは音楽を聴きながら運転していましたが、その日はあまりのきつさに音楽をオフにしていました。

後日、母にこの話をしました。
母は私に教えてくれました。
電話をしてきた日の朝、祖父が夢に出て来て、私の名前を呼んでいたそうです。

現実的にはあり得ないのですが、私は祖父が救ってくれたのだと思います。