廃屋で見つけた「みいちゃんのアルバム」
投稿者:with (43)
バタン!
と一層大きな音と共にドアが開くギイイイと金属が擦れた音が聞こえた。
振り返ると完全にドアが開いた状態で、廊下側からは部屋の中は見えないものの、何か異様な空気感というか気配がして、俺は固唾をのむ。
ぼーーーー……
一瞬何の音だ?と眉をしかめる。
その音は、例えるなら船舶が鳴らす重低音の汽笛のように聞こえ、骨伝導を通すように俺の脳に直接響いているみたいで吐き気がした。
クレヨンしんちゃんに登場するぼ〇ちゃんの声の方が想像しやすいかもしれない。
その音が部屋から聞こえ、次第に近づいていることがわかった。
「に、逃げるぞ」
Bが床材を踏み抜かないように細心の注意を払いながら階段を降りていくのを真似て、俺も後を続いた。
一階に降りると本当に焦っていた俺達の顔色を見たAが「マジなんかいたの?」ってアワアワしながら訊ねてきたが、それどころじゃないのでCを呼んで即座に退散する腹積もりであることを告げる。
「え?なんかあったん?」
Aと同様の反応を見せるCを連れて、足早に廃屋から脱出する。
外へ出てしまえば案外へっちゃらなもので、やたら広い庭先で立ち止まり、俺は2階での出来事を二人に説明した。
「マジかよ、ホームレス?」
「わからん。ヤバそうな奴だったし、ドアとか蹴り開けとったぞ」
改めて周辺の様子を確認してみるが、やはり車は一台も見当たらない。
肝試しの類いなら徒歩では厳しいし、車を停めるならここしかないハズだ。
「やっぱホームレスじゃね?お前らが騒いだから怒らせたんだよ」
Cもホームレス説を唱える。
確かにあの家に住み着くホームレスが寝ていたところに俺達が侵入して騒ぎ立てた為怒らせたのかもしれない。
相手から見たら俺達が得体の知れない不審者だ。
殺される可能性だってないわけじゃないので、護身のための抵抗だったのかもしれない。
「じゃああの音なんだったんだ?あれ人の声じゃなくね?」
Bは最後に聞こえた音について納得がいってないようだった。
「CDとかの音源だろ。防犯ブザー的な」
完全に酔いが覚めているAはスタスタと車に歩き出す。
まあ、目的のスリルも味わったことだし、これ以上ここにいてホームレスに危害を加えられでもしたらしょうない。
俺は車に戻り、今度はAとCの成果を聞いたが、これといったネタになりそうなものは見つからなかったそうだ。
そこで俺とBは顔を見合わせて不適に笑う。
俺達の収穫物、それは「みいちゃんのアルバム」だ。
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