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心霊

黒豆さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ムラツバキ君
短編 2026/06/07 12:40 100view

幼稚園の年中から年長にかけて、私はムラツバキ君という男の子とよく遊んでいました。

くるくるとしたくせ毛に、少し離れたたれ目が特徴的な子でした。

私も彼も大勢で遊ぶのがあまり得意ではなかったので、教室の隅で絵本を読んだり、積み木を重ねたりしていました。

時代もあったのでしょう。一度だけ、一人で歩いて少し離れた彼の家まで遊びに行った記憶があります。

その時、彼のお母さんが手作りしたケーキをごちそうしてくれました。

広いリビングで向かい合って食べている間、ムラツバキ君のお母さんは終始にこにこしていて、彼の髪を撫でたり、食べこぼしをそっと口へ運んだりしていました。幼い私はそれを見て、

「いいなあ。うちのお母さんとはちょっと違うなあ」

などと思った記憶があります。

学区が違ったのか、小学校へ上がってから彼と会うことはなくなりました。そして当たり前のように、その存在も忘れていったのです。

けれど、大人になってから彼を思い出すたび、ひとつだけ妙なことがありました。

最初のうちは、お互い幼稚園の制服かスモックを着ているのです。

ところが記憶を辿っていくうちに、いつの間にかムラツバキ君だけが黒いTシャツに黒いズボン姿になっているのです。

大人になってみると、幼い子どもに全身黒の服を着せるのは少し珍しい気もします。

ですが彼の家のモダンな内装などを思い出すと、そういう趣味の家庭だったのだろうと思っていました。

この話を誰かにした時、

「それ、イマジナリーフレンドじゃないの?」

と笑われたことがあります。

私も一緒になって笑いましたが、なぜか少し気になりました。

そこで実家へ帰った際、幼稚園時代のアルバムを確認してみたのです。

すると、ムラツバキ君は名前入りでしっかり写っていました。

私はほっとすると同時に、ほんの少しでも疑った自分がおかしくなりました。

幼稚園から社会人になるまで、私はその町に住んでいました。

その後、少し離れた町へ引っ越し、結婚しました。

さらに何年か経ったある日、きっかけは忘れてしまいましたが、生まれ育った町を夫に案内したことがありました。

久しぶりに訪れた町は驚くほど変わっていて、駐輪場しかなかった駅前には大きなマンションが建ち、よく通ったレンタルビデオ店はドラッグストアになっていて、本屋はコンビニになっていました。

しかし、昔から変わらないラーメン屋や学習塾も残っていました。

それらにいちいち驚いたり、思い出話を披露したりするたび、夫は笑いながら聞いていました。

そうして歩き回った夕方のことでした。

ファミレスでひと休みしながら、窓際の席で夫と向かい合って座っていました。

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