「ここ、高校生の頃よく来たんだよ。ドリンクバーだけで何時間も粘ってさ」
そんな話をしていた時でした。
目の前でストローをくるくる回していた夫の手が、不意に止まりました。
そして顔がこわばったのです。
「どうしたの」
と言うと、
「いや、べつに」
と言います。
そのまま私の話を聞いているようでしたが、明らかに口数が減り、どこか上の空になっていました。
急に場の空気が変わったことに苛立った私は、
「急にどうしたの」
「なにかあったの」
と聞きました。
しかし夫はうつむいたまま、
「なにもない。そろそろ出よう」
と繰り返すばかりでした。
その時です。
ドン!
と窓が鳴りました。
驚いて窓の外を見ると、そこには垣根と見慣れた道路があるだけでした。
さっきまで笑い転げていた雰囲気とは一変し、気まずい空気のまま店を出ました。
駅までのバスを待っている間も夫は黙りこくっていて、私は私で不機嫌になっていました。
そしてお互い押し黙ったまま電車に乗り換え、地元の駅に着いた時でした。
夫が言いました。
「ごめん。ファミレスから感じ悪くて。なんか久々に変なの見たんだわ」
夫はいわゆる「霊感の強い人」だったので、ある意味ほっとした私は、
「なんだ、言ってよ。なに見たの?」
と聞きました。
すると夫は少し言いづらそうにしてから答えました。
「なんか、くるくるパーマで黒T黒パンの子ども。言いづらいんだけどさ、そいつが……おまえのこと睨みつけて窓ドンドン叩いてたんだわ」
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