とある地方ラジオ番組の心霊トーク
投稿者:とくのしん (65)
■登場人物
A→ラジオパーソナリティー
B→アシスタント
C→ゲスト(お笑い芸人)
A:今日は夏の心霊特集ということで、お笑い芸人のCさんをお呼びしました~!
C:ど~も~!Cです!
B:あはは!
A:忙しいところわざわざこのコーナーのためだけに来ていただいて!
C:ホンマや!心霊コーナーのためだけに呼ばれるってどないなっとんねん!
B:ギャハハハ!
C:君、笑ってばっかやな!
B:いや、ウケる!
C:何がやねん!
A:Cさんといえば今まさに売れに売れているピン芸人として見ない日はないくらいですが、芸人になる前は制作会社でADやってらしたんですよね?
C:そうです。若い頃はADやってました。
B:へー!
A:それがお笑い芸人になったきっかけは?
C:テレビ業界に昔から憧れがあって。とんねるずさんおるやん。ホンマ生ダラに憧れてなぁ。そんで自分もおもろい番組作りたくて制作会社入りましたけど、いきなり小僧が番組制作なんて携われるわけもなく。ADからゆうて仕事やってましたけどADなんて使いっぱやからね。ホンマキッツイ環境で奴隷ですわ奴隷(笑)頑張っていたけど給料ひっくいしこれじゃあかん思うて就職探したけどなかなか見つからんて。まぁ学もないし、しょうがなしに吉本の養成所入った感じですわ。
B:それが今や一発芸人!
C:誰が一発芸人やねん!
A:あはは(笑)それでそのAD時代に体験した話をしてくれるというわけで、今日スタジオに来てくれたんですよね。
C:そうですね。いくつかあるんですけど。
B:聞きたーい!
A:元々霊感はあったの?
C:小学生の頃に火の玉見たとかそういうのはあった。
B:へー!
C:あと金縛りにはようあったな。実家近くがお寺で。よー金縛りにあったんよ。ボロ家やったんやけどいっつも人の視線とか感じてなぁ。寝てると声とかするんやで。
B:そんな家やだ~!
C:やだゆうても物心ついたころからそんなんやから、それが当たり前思うてたわ。友達が泊まりに来たら二度と来なくなったけどな(笑)あとで聞いたら霊の通り道やったって(笑)
A:まぁ友達の気持ちはわからなくもないかな。それじゃ、前置きはそれくらいにして体験談お願いします。
C:それじゃ最初は昔よくあったアイドルを心霊スポットに送り込むヤツ。見たことある?
A:あー、あったあった!
C:あれでね、アイドルが調子悪くなるってあったでしょ。あれは大抵ヤラセ
B:それ言っちゃっていいんですか?(笑)
C:もう時効や時効!でもたまにガチな現場があってな。
A:ほう!
C:ワイが体験したのはアイドルのOっていうのが昔おってな。それが一人でカメラ持って心霊トンネルに入って戻ってくるって企画やったんよ。
B:それ絶対無理!
C:Oも最初すんごい怖がってね。一応霊能者っちゅう親父連れていって。その人が数珠渡して「これが切れたらすぐに戻ってきなさい」と言ったんや。それでOは半泣きしながらトンネルに向かっていった。
A:うん
C:ほんでトンネル入り口まで来た時に「無理です!」って泣き出して戻ってきた。それじゃ画にならないからとディレクターも強引に行かせるわけや。Oは大泣きながらゆっくりトンネルに入ってった。トンネルは100mくらいの長さやったんやけど、半分くらいしたら急に走り出して向こう側にダッシュしていった。
B:こわ!
C:待っていたんやけど、なかなか戻ってこない。呼んでも返事もない。ほんでしゃーないので迎えに行こうって話になったら霊能者のおっさんが「あかんあかん!」言い出した。
何があかんのか聞いたら「大勢の霊がこっち見とる。はよう逃げようや」ゆうんや。でもO置いていけませんよってディレクターと揉めていたら、Oがこっちに走ってくるのが見えた。霊能者のおっさんパニックよw
「あかん!あの娘、もうダメや!」叫んでロケバス降りて逃げてしもうた。
A:そんなにやばかったの?
C:走ってきたOは白目剥いて変な走り方しとった。ほんで何とか取り押さえたんやけど、暴れて暴れてどうしようもない。女とは思えない力で暴れてな。ワイなんか顔蹴られて歯折れたし!
B:それで?
C:なんとか収まったんだけど、Oはしばらく気を失って。起きたら記憶がないゆうてた。覚えているのはトンネルに入って真ん中くらいで、数珠がいきなり切れて飛んだんやと。戻ろう思って後ろみたら男が立っていたらしい。そんで向こう側に逃げたらしいんやけど、そこから記憶がないゆうてた。
A:それでそのOさんは?
C:ワイもよくわからんけどそのあとすぐに事務所辞めたゆうてた。なのでそのあとはわからん。
B:ふえー!
C:それじゃもう一つ。昔、失踪した人の情報番組あったやん。
A:あったねぇ。
C:T県やったかな?奥さんが急に失踪したゆう話があって。旦那さんが起きたら急にいなくなっていたって話で。
B:うんうん
C:一日探したけど見つからないので警察に捜索願い出して。しかし捜索空しく見つからなかった。当時は結構話題になったらしい。主婦の神隠しかゆうて。ほんで番組に話がきた。番組でも一応は下調べするわけやけど、その奥さん評判よくて浮気とか借金作ってたとかそういう類の話は全くあらへんかった。大抵の失踪がそういう理由からドロンするらしいんやけど、そういうものなく旦那さんとの夫婦仲も特に悪くないって話でね。自宅から夜寝ていたら忽然と消えていたちゅうわけやから誘拐の線でも捜査されたらしいが、その痕跡がなかったらしく謎が謎を呼んでなぁ。
A:そんな事件あったんだ。
C:財布の入ったバッグも置いたまま旦那と子供置いてどこに消えたのかって騒ぎになって。当時は携帯なんてまだみんな持ってなかった時代やから、本当に足取りがわかんなかった。それで番組では霊能力者による霊視を試みるっていう方向になって。
A:そういうのあったねぇ!
C:ほんで会社がよく使うテレビ慣れした霊能者を呼ぼうとしたら予定が入ってて。この際マンネリもあれだから、海外の霊能力者使うかって話になった。そこでアメリカから霊能力者のおあばちゃん連れてきたんや。
B:おばちゃんw
C:FBI御用達で難事件をいくつも解決!ゆうフレコミで連れてきたけどな、実際はいくつかの捜査をお手伝いした程度やったそう。
A:そのフレーズよく使われていたね。
C:そうそう(笑)で、通訳連れてその家に行ったわけや。事前の情報は簡単には伝えていたが、霊視の邪魔になるからと言われて詳細な情報は何一つ教えてなかったってディレクターが言ってた。
B:へー
C:旦那さんと小学生の男の子が2人。インタビュー形式で失踪当時や奥さんのことをなどを話してもらいながら撮影はスタートした。淡々と撮影が進んでな。霊能者のおばはんは通訳さんからずっと会話の内容を聞いていた。撮影も終盤になり旦那さんとお子さんにいなくなった奥さんお母さんに一言呼びかけるって場面になって。旦那さんも子供さんも涙ながらに帰ってきてと訴えてた。もう現場も涙なしにはおれんかった。ワイも泣いたし
B:Cさんその顔で泣くとかキモイw
C:誰がキモいねん!ワイかて泣くわ!子供の「お母さん戻ってきて」という言葉が泣けたわ。そんでいよいよ霊能力者に視てもらうってことになった。それまで通訳の話を聞いて頷くだけだったんで、大丈夫かこのおばはんてスタッフはみんな心配してた。これなら別の霊能力者の方が良かったかなぁなんてディレクターは話してたくらいだったしな。そもそも呼んだのお前やろって思ったけど(笑)それで霊視を始めるゆうんで、おばはんは目を瞑って奥さんの写真を手にした。そんで2~3分経ったくらいかな、いきなりテレビがついたんや。スタッフか誰かがぶつかったとか、リモコン踏んだかと思ってキョロキョロしていたんやけど、みんな顔を横に振るばかり。
するとおばはんが“ウウウウ”と唸りだして。そんで部屋の電気が消えた。
A:ひえー!
C:そしたらテレビ画面がザーって砂嵐になってな。おばはんの唸り声と砂嵐の音だけになって、そこにいた全員だんまりよ。気が付けばほとんどのヤツがテレビに視線を移してた。テレビ画面にな、砂嵐の映像にうっすらと大きい池?湖みたいなのが映り始めたんよ。
B:ちょっと怖いんですけど!
C:旦那さんが何かの演出ですか?ってディレクターに聞いたりしてたんだけど、ディレクターは小声で違います答えてた。
C:ワイは音声さんの後ろにおったんやけど、“なんか変な声が聞こえる”て言い出して。ワイも正直かなりビビってた。テレビの湖みたいなところに今度は人影みたいなのが映りだして、子供が怖い怖い泣き出した。
B:・・・。
C:おばはんは唸り続けているし、テレビには変な影が映りだすし、電気はつかないし、もう現場はホラーよ。そしたらテレビの人影がはっきり女の人や、ってわかるシルエットになって。
A:うん。
C:唸ってたおばはんがピターっと黙った。そんでそのまま旦那さんの前に歩いて行って。そんで目を開いて一言・・・
また来週〜
↑来週も楽しみです!
こわいです
怖いですね(´゚ω゚`)
作者です。昨年6月以来の大賞受賞に感激しています。準大賞とのダブル受賞はこれで2度目となりますが、半年ぶりの大賞受賞は本当に嬉しいです。
実は準大賞作品の方がたくさんの怖いを押して頂けるかなって思っていましたが、こちらで大賞を獲れるとは思ってもいませんでした。
見たり聞いたりした話を、いかに怖いと思って読んでいただけるかを考えながら作品を書き上げるのは毎度非常に難しいですが、皆さんの怖いが自分のモチベーションに繋がっています。
怖いを100押して頂けるというのを目標にしておりますが、おかげさまで100を超えたのが10作品になりました。
これからも月2本のペースで投稿していきますので、楽しみにしていただけたら幸いです。
今年も宜しくお願いします。
テレビがガチだった時代ってあった。
今の若者はちょっとかわいそうとは思うけど。
今は完全に温室の中の番組しかなくて。
あ、今はつまらなすぎてテレビ見てなかった(笑)