時空を超えた落とし物
投稿者:take (96)
知人のA子さんが高校生の時の話です。
学校から帰宅して着替えようとしたとき、背後で『パタッ』と、
何か小さなものが落ちるような音がしました。
見ると、足元に消しゴムが転がっています。
まだ真新しいですが、まったくの新品ではなく、
2〜3回使用したように、先端の端がわずかに削れていたそうです。
しかし、彼女にはその消しゴムに見覚えがありませんし、買った覚えもありません。
中学生の弟に聞いてみても「知らない」と言います。
何だろう? と思ったのですが、特に気に留めることなく、
今使っている消しゴムがなくなったら使おう、と引き出しにしまいました。
翌日、授業中に、彼女の斜め前に座っているB子さんが、
消しゴムを落として、A子さんの足元を掠めて転がっていくのを、
A子さん本人も視界の隅で捉えていました。
拾ってあげようと体を屈めましたが、見当たりません。
「確かにこのあたりに転がったよね?」
周囲の生徒も見回しましたが、見つかりません。
「また後で探しなさい、すぐ出てくるだろう」
先生が言い、B子さんもシャーペンの後ろについている消しゴムでしのぎました。
休み時間も探したのですが、結局見つかりませんでした。
「あーあ、買ったばかりなのになー」
「おかしいねー」
B子さんも周囲も不思議そうでしたが、A子さんには心当たりがありました。
翌日、掃除当番だったA子さんは、
「昨日落としたの、これじゃない?」
と、自分の部屋に突然あらわれたあの消しゴムをB子さんに見せました。
「そうそう、これ! どこにあったの?」
「掃除してたらゴミ箱の後ろから出てきたよ」
「ええー、あれだけ探したのにー」
B子さんは不思議そうに首を傾げました。
「妖精さんが悪戯したんじゃない?」
「そうかもね」
と、笑い話で終わりました。
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