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不思議体験

タングステンの心さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

踊る標識
短編 2022/12/24 11:44 1,149view
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北関東某県の県道2号線。時刻はもう深夜1時を過ぎていたと思います。

仕事を終えた私が、ふだん乗っている軽自動車で職場があるT市の隣町I市にさしかかったときのことでした。仕事終わりのことですから、私は疲れていましたし、多少眠かったことも事実です。しかし、あれは断じて夢などではない。そう言い切れます。

この県道2号をただただまっすぐに、あと30〜40分も行けば帰宅できるというところに私はいました。退屈な運転ですが、その夜いつもの国道を行くのではなくこの県道を行くことにしたのは、畑ばかりのところを突っ切る国道をまっすぐに行くよりは信号機も多く、夜の繁華街の灯りも目に入ってくるため、眠気覚ましになると思ってのことでした。

あと少しでI市の駅前繁華街に入ろうというところ、O市方向に向かってH川にかかる小さな橋を上る手前のところです。

繁華街手前の薄暗いなかを走行していたのですが、ふと、左手の方に違和感を覚えました。

目に入ったのは標識でした。それは、確かに以前にも見覚えのある、蛍光色の黄色っぽい縦長の標識で「追突注意」と書かれていました。ハテ、こんなところにあったかな。もう少し先にあったのじゃないかしら。確かに、そういぶかしく思ったことを記憶しています。

その標識が踊っていました。

くねくねくねくねくねくねとまるで生き物のようにそれが揺れているのです。

だれか酔っぱらいでもそこにいて、いたずらして揺らしているのかな。

最初はそう思ったのですが、その動きはあまりにも異常でした。それはまるで、細長い深海魚かなにかのように、くねくねくねくねくねくねと螺旋状にまわっているようにさえ見えます。

思わず私は車の速度を落として、それを凝視しながら通過しました。まわりにはだれもおらず、標識が踊り狂っているばかりです。

妙なものを見た、と思いつつ呆然として車を走らせておりますと、すぐ眼前にもう1つ「追突注意」の標識が見えました。さすがに今度は静止していましたが、私が記憶していたのはこちらの標識のようでした。あれ…それではさっきのは…。

以後、そこを走行してどう目を凝らしても、「追突注意」の標識は1つしかありません。なにかに化かされでもしたのでしょうか…。

ちなみに、私が暮らす北関東某県には海がないにもかかわらず、H川のほとりには竜宮と名のつく地名やお宮があります。「深海魚かなにかのように」、というのもあながち偶然ではないのかもしれません。

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コメント(1)
  • くねくねか

    2022/12/24/14:51

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