白いワンピースの女性

ある夜、家の近くの公園を通りかかったときのことです。

ベンチに座っている女の人がいました。暗くて顔はよく見えませんが、白いワンピースを着ているので女性だとわかります。その人は私を見ると、立ち上がり

「こんばんは」

と挨拶してきました。声を聞くかぎりでは若い女性に思えました。

私は驚いて、

「こんばんは」

と返しました。そしてそのまま通り過ぎようとしましたが、彼女は私のそばを離れずついてきます。

「どうしたんですか？」

と尋ねると、

「お話したいことがあるのです」

と答えました。

私は立ち止まって彼女のほうへ向き直りました。

すると彼女は自分のことを『ミコ』だと名乗りました。本名かどうかは知りません。

年齢は二十歳くらいでしょうか。すらりと背が高く、髪は長くウェーブがかかっています。美人です。でも、どこか寂しそうな感じもする人でした。

「あなたはなぜここにいるんですか？ 家はどこですか？」

と尋ねても答えてくれません。ただ黙ったままついてくるだけです。

仕方なく、私は家まで送ることにしました。彼女を一人で帰すわけにはいきませんからね。

二人で歩きながらいろいろ話をしました。といっても彼女が一方的に話しかけてくるだけですが……。

そのときに聞いた話では、彼女は三年前に病気で亡くなったそうです。しかし、どうしても成仏できず、今もこの世を彷徨っているとのことでした。

「どうしてそんなことになったんですか？」

と尋ねると、彼女はうつむいてしまいました。

何か事情があるんだなと思いそれ以上追及することはやめました。

結局、彼女の家は近くだったようですぐに着きました。

「ここで大丈夫？」

と訊くと、うなずいたのでそこで別れることになりました。

それ以来彼女を見かけることはありませんでした。一度気になって近所の人に三年前に病気で亡くなった女性について聞いてみたりもしたのですが誰も知らないようでした。彼女は今もどこかで彷徨い続けてるのかもしれませんが私にはどうすることもできません……。