白装束の人はあたりをキョロキョロと確認している。
見つかったらマジで殺されるかもと思った俺は涙目になりながらも、いつでも角材を振れるように構える。
暗闇を纏った茂みにいる俺の姿が見えるわけもなく、白装束の人は人形を木から引き剥がしてその場から立ち去っていく。
確か丑の刻参りは他人に見られたら呪いが自分に跳ね返ると聞いた事があった俺は、俺に見られたと思って立ち去ったんだなと勝手に納得した。
息を吐いて安堵した俺は、立ち上がって痺れた足腰をほぐすようにして背伸びした。
角材の出番がなかったのは幸運だったのかもしれない。
今年の締めくくりにいい話のタネが出来たと、ちょっと悦に浸りながら俺は家に帰ることにした。
家族を起こさないように帰宅した俺は部屋に戻って布団に潜り込んだ。
氷のように冷えた体を一秒でも早く温め直さなければ本当に風邪をひきそうだった。
それから10分くらいしてかじかんだ指先も動くようになってきて、うとうととしていたところ、コツーンと例の音が聞こえた。
「うわ、またか…」
俺がいなくなったのを確認して再開したのだろうか、音は断続的に聞こえてきた。
「よくやるわ」
俺は欠伸しながら呆れた。
しかし、俺は気が付いてしまう。
妙に音が近い。
ハッとした俺は布団から飛び起きて窓辺に寄る。
カーテンを摘むようにして隙間から外を覗き込んだら、下露で歪んだ視界の先、雑木林の一点に白い塊が見えた。
「えっ?えっ?マジか」
そう、あの白装束の奴が俺の家の間裏にある雑木林で人形を打ち付けていた。
奴は立ち去ったと見せかけて俺が安心しきって姿を現すのを隠れて見ていたんだ。
そして俺を尾行して家を突き止めた。
俺は狼狽えながらもこの事態に陥った原因を冷静に分析していた。
コツーン
マジでヤバイと思った俺は窓から離れて床にへたり込む。
親を起こして相談するか、最悪警察に通報するか、なんて考えたがこういう時は体が動かないんだな。
しばらく放心していると、
コツッ
とすぐそこから音が聞こえた。
俺は窓を見上げた。
人間でも幽霊でも怖すぎる