夜中に顔を覗きこむ髪の長い女
投稿者:with (43)
モヤだと思っていたのは人影で、月明かりが照らしたのは髪の長い女の顔だった。
女はまるで引き寄せられるように俺の方へと近づいてくる。
まるで糸で手繰られているように、弾むことなく滑るように、至近距離にまでやってくる。
そして、いよいよ俺の枕元付近まで近づくと、長い髪を布団に垂らし、髪の奥に覗かせる白い顔が俺ににじり寄ってくる。
恐怖のあまり心臓がバクバクしていたと思う。
白い顔が俺の鼻先と重なるほど近づいた瞬間、俺は体が動くことに気づき、布団から体を起こした。
「うわああああ!」
深夜だが、俺は絶叫と共に立ち上がって電気をつけると、近くに転がっていたペットボトルを拾って武器代わりに抱えて縮こまり、女を探した。
しかし、女の姿はどこにもなかった。
数十分くらい放心して硬直していたが、ようやく足腰に力が入ったので玄関の施錠を確認し、風呂やトイレの中も念入りに確認して回ったが誰もいない。
布団に座り込み、俺は横になった。
やはり、あれは夢だったのか。
だとしたら妙にリアルで最低の夢だと思った。
今夜は怖いので、電気をつけたまま寝ることにした俺は、スマホを片手にうつ伏せになりゲームで気を紛らせることにした。
その時、布団の上に一本の長い黒髪が落ちているのを発見した俺はすかさず財布を手に取りアパートを飛び出し、近くのコンビニに逃げ込んだ。
それからコンビニを梯子しながら朝まで時間を潰した。
朝になると実家の両親に連絡し、近い内に引っ越すことを伝え、電話越しに頭を下げてどうにか頼み込み頭金の用意をしてもらえることになった。
引っ越し先が決まるまでの間は今のアパートで暮らすしかないが、どうか何も起きないことを祈るばかりだった。
因みに、俺は短髪だ。
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