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心霊

withさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

モニター付きインターホン
短編 2021/11/06 19:37 1,647view
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私の実家は築30年と古く、キッチンや風呂場といった備え付けの物は何世代か前のデザインが多い。インターホンも同じで、モニター機能のない通話のみのタイプで、風化してだいぶガタがきていた。

少し前から誰もインターホンを押していないのにチャイムが鳴ることがあった。当時はかなり驚いたが、配線の劣化や虫などの侵入で稀に起こることがあるらしく、私もそう考えていた。

この機会にモニター付きのインターホンに買い換えようと提案すると、家族も賛成し、数日後には取付工事を終えた。

新しいものを手にすると暫くの間は感動して、無意味にモニターを点けては外を眺めていた。

モニターで外を確認するのが日課になっていたある日、何気なく外を確認すると、遠くの方に人影が見える。モニター越しに見える道路は上り坂で、ほとんど山と空しか見えない田舎風景。人通りはまばらで、私の家より先にはあまり軒数はなく、通行人自体珍しいものだった。

珍しいな。

そう思ったが万が一この家のお客さんだといけないのでモニターを切った。モニターをつけた状態だとチャイムが鳴らない仕様だ。結局チャイムは鳴ることがなかったので、ただの通行人だったらしい。

後日、またモニターを見ていると、人影らしき物体が遠くの方で揺れていた。私は、何となく気持ち悪さを感じてモニターを切り、風呂に入ることにした。

それから何日か、日課をやめて過ごしている内に人影のことを忘れていた。その日、共働きの両親が残業で帰りが遅くなった。好きなテレビ番組を観て、スマホゲームをやって有意義に過ごしていると突然チャイムが鳴る。

ピンポーン

心臓が飛び出そうなほど肩が跳ねて、思わず身構える。時計に目をやれば夜九時を回っている。

何て非常識な客だ。

なんて悪態づきながらも私は点滅するインターホンの呼び出しボタンを押した。

「はい」

ザザザ……

私の声のあとに何も返事はなく、風の音が擦れるように聞こえるだけだった。悪戯だと思いインターホンを切ると、またすぐにチャイムが鳴る。私はすぐさま出てみることにした。

「なんですか」

返事はなく、風の音が聞こえる。私はふと画面枠内にあるメニューに気がつく。設定でライトが点灯する機能があることを思いだし、ライトを照らして顔を確認してやろうと考えた。

ライトを点けると両目のない女の顔がモニターに張り付くように覗き込んでいた。

「ぎゃああああ」

思わず後退りソファに引っくり返った。

恐怖のあまりハムスターのように固まったまま、通話中のインターホンを離れた場所で見続ける。一定時間経つとモニターは切れ、画面は暗くなった。

それからインターホンは鳴らされる事がなく、22時くらいには両親が帰宅し、放心状態の私を見て首を傾げていた。

私は夜遅くに誰か来たことを報告すると、父がインターホンの記録を確認する。来歴の映像は勝手に録画されているので、今日の日付データを再生する。すると、誰もいないのにインターホンが鳴らされている映像が残っているだけった。

「また故障かな?」

父が苦笑しながら言ったが、私は記録を漁っていた。さっき鳴らされたのは二回なのに、二回目の映像データが見当たらなかった。

それから何年か経っているが、あの女の事は両親に黙っている。無駄な心労はかけたくないし、何より、私があの夜の出来事を思い出したくないからだ。

結局、あの女の正体はわからないままだ。

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