証明写真
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
これは友人Hから聞いた話です。
僕とHは同じ高校出身で、クラスは違っていましたが、地元を離れて東京の同じ大学に進学するという事で仲良くなったのです。
なんでも、Hは相当モテたそうで、常に彼女が途切れないという話がクラスが違う僕の耳にも入るほどでした。
ただ、進学が決まると彼女(「I」とします)と別れたとも聞きました。
詳しくは聞かなかったのですが、かなり酷い別れ方だったそうです。
Iは別れたショックで半ば引きこもりになり、自殺でもしかねない状態だったという事でした。
もちろんそれは家族や友人のサポートで何とか立ち直ったとも聞いていました。
大学生活にも慣れた頃、Hはアルバイトを探そうとしました。
Hは履歴書に使う証明写真を撮るため、夜も遅い時間でしたが、近くの書店にある、いわゆる「3分間写真」を使うことにしました。
写真は1回につき4枚撮影し、それぞれ違うポーズを取ることができます。
Hは微妙に顔の角度を変え、少し上を向いたり下を向いたり、自分なりの一番いい角度を試したらしいのです。
そして3分後に写真が出来上がりました。
できた写真を見ると、自分の後ろに人の形をしたような黒い影がある事に気が付きました。
もちろん、そこにはHしかいないし、後ろに誰かが立つような事はできません。
写真は4枚あり、それぞれ微妙に顔の角度が違っていて、それに合わせるようにその影も形を変えていました。
1枚目は、後ろの壁に映ったただの影でした。2枚目、3枚目にしたがって影が大きくなっていったそうです。
そして、4枚目の少し上を向いて向いた写真には、何か手のようなものがその首を絞めているように見えたそうです。
しかも、後頭部にある黒い影は、明らかに人の顔に見えたと言っていました。
それは別れたIにどことなく似ていたらしいのです。
Hが4枚の写真から目を離せず、しばらく動けなくなっているその時に、ケータイに1通のメールが届きました。
それはこんな内容だったそうです。
「私がHに一番ふさわしい女だ。それを証明してやる。」
差出人はIでした。
Hはさすがに怖くなり、メールを削除して、写真を握りつぶしてその場に捨てて急いで家に帰ったという事です。
それ以来、Hは絶対に3分間写真を使わない事にしたそうです。
「証明写真」というのは、いろいろな物を証明できるみたいです。
証明写真てそういう意味なんですね。深くて怖い
証明…おもしろい